自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

もしドラッカーが行動分析家だったら:ドラッカーの名言を行動分析学から解釈する(その2) 「理論は現実に従う」

名言〔第29位〕:「理論は現実に従う」

解釈:企業において従業員や顧客や管理職の行動について、環境と行動との相互作用(「〜のときに〜したら〜となった」というオペラントや「〜によって〜する」が引き起こされる」というレスポンデント)を一つひとつ明らかにしながら、経営に重要な行動の制御変数を現場で見つけ、記述していき、結果として特定の個人や状況や集団を超えて共通の関係性がみえてくれば、最終的にはそれが“理論”となる。始めに経営の理論があって、それを実行して確かめるのではなく、小さな成功を数多く重ねて行くことで、経営の“理論”も見えてくるかもしれない。つまり、理論は演繹的にではなく帰納的に導かれるべきであるのだ。それでもその“理論”はおまけのようなものであり、大事なのは一つひとつのマネジメントの成功なのである。最終的に“理論”がまとまらなくても、帰納的に仕事を進める限り、そのあとには成功が残るのだから。

本シリーズの過去記事一覧:

第30位:「総体は部分の集合とは異なる