自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

行動分析学から心理学の基礎概念を解釈する(その16):愛着(理論)とストレンジ・シチュエーション法

定義:

愛着:ボウルビィが定義した赤ん坊の母親に対する特別な情緒的結びつき(『心理学辞典』(有斐閣),  p. 4)。 ストレンジ・シチュエーション法:エインズワースによる愛着の質を測定する実験法(同, p. 476)。

行動分析学的解釈:

分離場面で泣く

  • 母親が離れることが泣き行動(レスポンデント)の無条件刺激となっている。
  • 母親が離れることが泣き行動(レスポンデント)の条件刺激となっている(ミルクを飲んでいる途中で母親が用事で離れた:母親が離れる & ミルクの中断)。
  • 母親が習得性好子となり、 母親が離れることが泣き行動(オペラント)の弁別刺激になっている(泣くと母親が戻ってくることで強化される)。
  • 母親が離れることが習得性嫌子となり、 母親が離れることが確立操作となり、泣き行動など、この状態を終結させる行動クラスの自発頻度が高まる。

分離場面で見知らぬ人に接近し、遊ぶ

  • 見知らぬ人が生得性/習得性の好子として機能し、接近行動(オペラント)を強化している。

再開場面でしがみつく

  • 母親の短時間の不在が母親の好子としての価値を高め(確立操作)、
  • 母親が離れることを阻止する行動クラス(しがみつく、泣く、叩く)の自発頻度が高まり、
  • そうすることで母親が不在にならなければ、こうした行動が強化される。

本シリーズの過去記事一覧: