自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

Kzokuコラボ企画:ケーゾクはチカラ! その2

 今週から体重と体脂肪率と行動の記録をKzokuを使って再開しました。Kzokuでは「やること」をチェックリスト形式で登録し、こんなふうに毎日記録していきます。

Kzokutodolist20090612

 「やること」は自分で決めてもいいし、"プランNavi"を使って専門家が提供しているコースから選ぶことも可能です。「メタボ改善プラン」とか「モデル体型じっくりコース 」とか、50以上の様々なプランが用意されています。

 「やること」を記録していくと、やろうと思ったことがどれくらいできたかが表示されます。体重・体脂肪率とは別の棒グラフに。Kzokuではこれを"ヤッターモニター"と呼んでいます。いわゆる"視える化"の技術です。

Kzokuyattarmonitor20090612

 ダイエットの継続は、体重や体脂肪率が目に見えて減らないときが一番難しくなります。そんなときでも行動を記録してヤッターモニターで確認すれば継続しやすくなります。ダイエットのように、行動を継続していけば累積的な成果がでるのに1回の行動(たとえば腹筋を20回するとか、駅の階段を一気に駆け上がるなど)では目に見える成果がでない状況を"塵も積もれば山となる"型と呼んでいます。こうした状況では、その成果の重要性を頭では理解していても、そのための行動は継続されにくいことが行動分析学の研究からわかっています。

 わかっちゃいるのに続かないという問題があれば、その背景に"塵も積もれば山となる"状況があるとみて、ほぼ間違いないことでしょう。

 "塵も積もれば山となる"状況を打破する方法の一つが行動の記録を視える化すること、そして1回の行動によって記録が確実に変化するように記録の仕方を工夫することなんです。

 岡田斗司夫氏の『いつまでもデブと思うなよ』で話題になった"レコーディングダイエット"などは、このコツを活用している一例と言えるかもしれません。

 ただし、継続するためには何がなんでも記録すればいいというわけではありません。記録することによって、行動が目に視える成果を生みだすように仕組むところが肝心です。

 そして、これはダイエットだけではなくて、会社で目標を達成するための努力をしたり、志望校合格のために勉強したり、CO2削減のために節電したり、幸せな家庭を築くために夫婦間で相手を思いやったりすることにも応用できる行動分析学のコツの一つです。

行動分析学的ダイエットの"コツ"、第二弾はこれ。

行動分析学的ダイエットの"コツ" ○ダイエットにむけて何か望ましい行動をしたら、それが目で見てわかる方法で記録を取りましょう。

 最近話題のインサイトプリウスなどのハイブリッドカーにはエコ運転を促進するための行動支援システムがついています。ゆっくり発進したり、加速していれば「エコ」のライトが点灯しますが、急にアクセルを踏み込めばたちまちレッドカードを突きつけられます。エコ運転のフィードバックがなければ、急発進や急加速の結果は"塵も積もれば山となる"状況で燃費の悪化につながります。だからこうした行動はなかなか減らせないのです。ところが1回の急発進や急加速に、目に視える形で燃費の悪化やCO2の増加をフィードバックすることで行動は変わります。

 さて、私のKzokuプロジェクトです。今週はまずは記録をとることに専念しました。行動分析学では、問題を解決する前に現状を把握することを重視します。そして、そのために解決策を導入する前に記録を継続してとって分析します。これを"ベースライン"と呼びます。

Kzokuperformancemonitor20090612

 上のグラフからわかるように、この5日間、体重は減少傾向にあります。このプロジェクトを始めて、記録をつけ始めたことで、夕食後、寝るまでの間に食べていた間食が減りました。ところがこの成果に油断して、昨晩は23時過ぎにビール3本飲みながら、カラムーチョ、いかなんこつ、亀田の柿の種をたいらげました。さっそくのリバウンドです。今晩、体重計に乗るときにそれがわかるはずです。

 次週も引き続きベースラインを取り、現状分析をして、ご報告します。 

〈第2弾へ続く〉