自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

塵も積もれば5億円:埋蔵金ならぬ埋蔵ポイントの随伴性

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被災地・者支援として寄付したポイントの報告があがってきた。セゾンカード(永久不滅ポイント)は5月5日現在でなんと5億円以上が集まったそうだ。

まさに塵も積もれば山となるである。

通常,塵も積もれば山となる型の随伴性を記述したルールは行動を引き起こしにくいが(例:毎日30分ジョギングすればダイエットできる),今回の場合,被災された人たちのために「今」何かをしたい,何もできないのは心苦しいという強力な確立操作が作用し,各々の寄付行動そのものは嫌子消失による強化随伴性で自発され,強化されていると考えられるが,同時に,大手の企業であれば相応のポイントが累積するだろうという,短期決戦による「大勢が塵を積もらせれば一瞬として山になるはず」というルールも効いているのかもしれない。

家庭での節電行動も同じで,これまでは「どうせ私がコンセントを抜いても地球レベルの温暖化には何の影響もない」だったルールが,「皆が一斉にコンセントを抜けば消費電力が一斉に下がる」というルールに変わる可能性を秘めている。

FacebookTwitterを介した中東の民主化運動も同じで,「自分一人が○○しても(投票しても)無駄だ」というような民主主義を滅ぼす絶望的ルールが「皆で○○すれば何かが変わる」楽観的ルールに変わりつつあるところに注目である。

情報システムがこのルール(が記述する随伴性)の変化に一役買っているのは間違いないが,集団行動が一気に自発する,エポックメイキングとなるような社会事象も必要なのだろう。

こうしたルールの変化が,事態が落ち着いたり,時間が経過した後にどうなっていくのか(情報システムによる随伴性の変化はそのままで),しっかり観察していこう。