自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

Kzokuコラボ企画:ケーゾクはチカラ! その5

前回までのあらすじ  なぜなぜ5回法を使ってダイエットする理由を見直した島宗は、体重や体脂肪率の低下そのものを目標にするのではなく、テニスやクライミングの上達を目指したセルフマネジメントにKzokuを活用すべく、まずはベースラインの測定を始めたのであった。

 なんだか懐かしい書き出しだなぁと思った人は、きっと私と同年代ですね。あとこれに「登場人物」の欄さえあれば...

 冗談はさておき。今回はダイエットの継続のために私が使っているワザをいくつかご紹介します。第3回の記事で解説したように、どんな工夫が成功するかは人によって異なります。私にとっては有効でも皆さんにはうまくいかないかもしれませんが、やってみないとわからないから面白いのです。ヒントになればぜひ自分なりのワザの開発に役立てて下さい。

 まずは体重と体脂肪率の測定について。記録を続けることがダイエットの継続に最も重要な要因であることは間違いありません。でも、記録を継続することほど、一見とても簡単そうで実はとても難しいこともありません。よって、いくつかの工夫が必要になってきます。

 私の場合、足裏で体脂肪も同時に計測できるタイプの体重計を使っていて、これを洗面所の床に置いてあります。洗面所は風呂からでたところにあり、風呂から出たら体をふいて、すぐそのまま裸で体重計に乗るようにしています。

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 床に置きっぱなしだと、邪魔だし、見かけも悪いですが、片付けてはいけません。片付けると、測定のたびに出してきて、また片付けなくてはならないという"行動のコスト"が生じます。行動のコストというのは、簡単に言えば、めんどうくさいということです。些細なことだと思われるかもしれませんが、ほんのちょっとのコストでも行動の継続には大きく影響します。だから、いかに簡単に測定できるように工夫するかが大事です。

 測定は、毎晩、寝る前にやっています。できるだけ同じ条件で測定することが私にとっては大事です。ダイエットのための「やること」をすれば必ず一日でそのぶんの成果がでます。たとえ500gでも"成果"です。ところが測定条件を一定にしておかないと、この成果を測り損ねてしまいます。だから、寝る前に(つまり、一日の食事がすべて終わった後で)、裸で(つまり、そのときに着ている服などに影響されず)、同じ体重計で(つまり、ジムや銭湯にも体重計がありますが、機械による誤差に影響されないように)測定します。重要なのは、測定するたびに、直前に頑張ったぶんの成果が読み取れるようにすることです。逆もまた真なりで、食べ過ぎたときなどは、それがそのまま測定できるようにすることも大切です。

 体重計に乗って自分の体重を知るだけでは、自分の場合、ダイエットの継続には不十分です。記録して、グラフにして、それを目で見て、ようやく効果が現われます。ですので、洗面所の体重計からパソコンのKzokuまでをつなぐシステムが必要になります。最近ではUSBでつながる体重計やKzokuのようにグラフまで作成してくれるゲーム機もあるようですが、私の"システム"は安くてお手軽な付箋とペンです。

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 付箋は100円ショップで購入したもの。ペンはもらいものです。これを洗面所に置きっぱなしにして(片付けてはいけませんよ)、体重計に乗ったらすぐにここにメモします。USBケーブルをつなぐ手間やパソコンを立ち上げる手間は行動コストになりますから要注意です。そして、寝る前の仕事はここまで。後は翌朝、歯を磨いた後に体重と体脂肪率を記入した付箋を切り取って手帳に貼っておき、仕事を始めるときにKzokuに入力します。入力のためにわざわざパソコンを立ち上げるのではなく、立ち上がっているパソコンを使うという点もワザの一つです。

 「やること」の記録はKzokuにそのまま入力することもあれば、システム手帳を使うときもあります。自分は毎日その日にやることをto-doリストとして書き出しています。仕事も遊びもです。

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 その手帳のディバイダー(その日のページに栞代わりにはさんでおくプラスティックのボード)に、「やること」を貼っておきます。宛名ラベルに印刷すると楽です。こうしておくと、わざわざこのためにシステム手帳をカスタマイズしなくても、毎日「やること」をチェックできます。

 これは今週から始めたテニスとクライミングの記録です。

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 こちらは昨年ダイエットしたときに使っていた「やること」です(すみません、ピンボケです)。

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 ふだんからしていて、すでに慣習化している、つまりことさらに努力しなくても継続している他の行動に相乗りしてしまうところがこのワザのポイントです。

 以上、記録を継続するための私のワザからみえてくる、行動分析学的ダイエットの"コツ"、第五弾はこれ。

行動分析学的ダイエットの"コツ" ○体重・体脂肪の計測はできるだけ簡単にする。

○計測した記録を視覚化するまでの手順もできるだけ簡略化する。

○頑張ったぶんの成果が数百グラムまで読み取れるようにする。

○ふだんからやっている、慣習化した行動に相乗りさせる。

 他にもいくつかワザがありますが、汎用性はあまりないかもしれません。今回はそんなレアワザを2つだけご紹介します。

 一つは昼食シリアル法。これは前日に食べ過ぎ、飲み過ぎで体重が増えたら、元に戻るまでは昼食をシリアルだけにする方法です。シリアルといっても、玄米とかブランとかグラノーラなどの、甘くない大人向け商品。これをキャンプ用のステンレス製食器に入れて、無脂肪牛乳に浸して食べます。どうしてもドッ○フードとか○ャットフードのイメージがして、美味しくても大量には食べられません。体重は1-2日で確実に落ちます。お通じもよくなります。"予約"と称して、飲み会の日の昼飯にこの方法を使うこともあります(そうすると、たらふく飲んで食べてもそれほど体重が増えないので、なんだか嬉しい気持ちになります)。

 もう一つはおみやげおっそわけ法。自分は酔っぱらうと帰宅途中でほぼ間違いなくコンビニに立ち寄ります。二日酔い防止のためにウコン系のドリンクを買う、というのは口実で、シュークリームやエクレア、せんべいやカラムーチョなどを大量に購入します。そして帰宅すると、それを0時から1時過ぎまで食べ続け、そのまま寝てしまいます。胃腸にも悪いし、健康にも悪いし、もちろんダイエットにもマイナスです。

 コンビニでの買い物を減らしたり、酔っぱらって帰ったときの間食を減らすトライもしてきましたが、うまくいきません。そこで、買ってきたお菓子を「おっそわけ」用の袋に入れて、誰にあげるかをマジックで書いておくことにしました。自分が食べるぶんも少しは取り(たとえばエクレア1個)、残りを「おっそわけ」袋に入れるのがコツのようです。このワザの成功率もそれほど高くありません。結局「おっそわけ」袋を開けて食べてしまったこともあります。でも、しないよりはましです。

 最近はそのままにしておいた「おっそわけ」袋を1-2日後に捨てるという反モッタイナイ法も併用しています。この間はミスドで買った4つのドーナツのうち2つをその夜に食べ、2つを「おっそわけ」袋に入れてセーブし、二日後に廃棄しました。ちょうど、コンビニ弁当を安売りさせないセブンイレブンに対し、公正取引委員会が排除措置命令を出した日で、ニュースでは食料自給率が低いくせに、コンビニだけで世界の食糧援助の5%、日本全体だと世界の食糧援助の6倍近い食料を廃棄している現状が批判されていたところでした。とても申し訳ない気持ちになりました。この気持ちがうまく喚起できれば、もしかしたら飲んで帰る帰宅途中に余分な食料を購入するという行動を減らせるかもしれませんね。

 さて次回はいよいよこのシリーズの最終回です。テニスやクライミングの上達を目指したセルフマネジメントの成果を公開したいので、来週ではなく2-3週間後にご報告します。

〈第6弾(最終回)へ続く〉