自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

Kzokuコラボ企画:ケーゾクはチカラ! その7(番外編)

春もうらら、と言えるほどまで暖かくなりませんね、なかなか。

それでも大学周辺の桜は咲き出してます。今週末の入学式までには満開を迎えることでしょう。

さて今回は連載記事「ケーゾクはチカラ!」の番外編として、今年度、ゼミ生の一人が卒論で取り組んだダイエットに関する行動契約の研究成果をご紹介します。

「行動契約」とはすべき行動を取り決めてそれができたときの強化(好子の獲得)や弱化(好子の剥奪や嫌子の提示)の随伴性を契約する行動マネジメントの方法です。

今回は目標がダイエットでしたので、「野菜を食べる」「ジョギング30分」「水を1L飲む」「風呂上がりにストレッチ」「腹八分目にする」などの行動リストを参加者ごとに作成し、毎日の遂行数に目標を設定しました。

行動契約では目標を達成しなかったらiPodまたは携帯電話を没収というペナルティの随伴性を使いました。もちろん《モドキ》の随伴性です(たとえば、野菜を食べることでiPodが没収されないという好子消失阻止による強化モドキの随伴性)。

参加者3人のうち、参加者1はKzokuを使って記録をして行動契約を実施しました。参加者2はKzokuは使わずに実験者とのメールなどによるやりとりで行動契約を実施しました。参加者3はKzokuを使いましたが、行動契約は実施しませんでした。

その結果、行動契約を導入した参加者2人ですべき行動の遂行数が増加し、体重も減少しました。行動契約を導入しなかった参加者においてはそのような変化が見られませんでした。

Kzokucounseling


セルフマネジメントの成否に及ぼす要因には大きな個人差があります。メモに体重を記録するだけでうまくいく人もいれば、Kzokuを使って体重や「やること」を毎日記録しても、それだけではうまくいかない人もいるでしょう。

このため成功のためには個人差に応じた段階的な介入を用意することが必要になります。

今回の研究成果は、Kzokuを使って記録するだけでは十分な効果が得られない人も、カウンセリング的な支援を個別に受けることでダイエットを成功させられる可能性を示しています。カウンセラーとのやりとりはメールなどでも可能ですが、Kzokuを使うことで、カウンセラーにとっては記録をみながら個人差に応じた支援をすることが容易になるというメリットがあります(たとえば、その人がどのような「やること」なら遂行しやすく、どのような「やること」は苦手なのかなどを理解しながらアドバイスできる)。

スポーツジムなどでも利用者ごとにメニューを作成して運動や食生活についても相談できるパーソナルトレーナーに対するニーズが増えているようです。そうした健康支援サービスの基幹システムとしてKzokuをとらえると面白いビジネスチャンスになりそうです。