自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

こんな本書きました:『リーダーのための行動分析学入門』

 京都で開催された国際行動分析学会(ABAI)も大盛況のまま終了し、この夏、というか春から、ずっと続いてた常識を越えた忙しさも一段落。ようやく一息つけそうです。

 というわけで、9月17日に刊行された拙著のご紹介です。

 『リーダーのための行動分析学入門』(日本実業出版社)は、副題にあるように、部下を育て、強いチームをつくる方法を解説したビジネスパーソン向けの本です。

 行動分析学をベースにしたコンサルテーションをグローバル企業に提供しているCLG(Continuous Learning Group)のアジア進出に伴い、彼らの協力を得て、大企業への介入事例も掲載しています。

 CLGは以前にも日本の某大手企業にコンサルを提供したことがあり、その会社の大型M&A案件を成功に導くことに貢献しています。このとき、CLGを起業した当時のCEOの一人、Leslie Wilk Braksik博士に頼まれて、彼女の著書『Unlock Behavior, Unleash Profits』の日本語翻訳をお手伝いしました。クライアント企業内の研修に使うためでした。
 LeslieはWestern Michigan University大学院時代の同級生で、右も左もわからないままKalamazooに着き、アパートが見つかるまで学部生用のドミトリーの部屋で寂しく暮らしていた私をテニスや食事に誘ってくれて、友達づくりを後押してくれた恩人です。その恩返しにでもなればと思い、お手伝いさせていただいたのです。
 今回、日本と韓国にオフィスを構え、本格的にビジネスをスタートするので色々と手伝って欲しいという彼女の要請に応え、最初は彼女の本の翻訳を正式に出版することも検討していました。ですが、日本の経営者やビジネスパーソンにとって、よりわかりやすく、伝わりやすい本にするためには、日本の文化や慣習も考慮し、日本での事例も加えた方がいいだろうということになり、『Unlock Behavior, Unleash Profits』に紹介されている、CLGの考え方や方法論、用語や事例などを使う許諾をいただき、オリジナル本として書き下ろしました。

 先々週、Amazonの「売れ筋ランキング」を見ていたら、この本が「ビジネス・経済」の下の「実践経営・リーダーシップ」の下の「CI・M&A」のサブカテゴリーに入っていました。確かにM&Aの事例も紹介しているのですが、同じレベルのサブカテゴリーに「リーダーシップ」もありますから、妙な感じもします。出版社の担当編集者さんに質問したら、このサブカテゴリーの指定は出版社にはできないそうです。Amazonが独自に分類しているとのこと。
 なんて書きながら、今一度「売れ筋ランキング」を確認したら、今日は「経営理論」に入っていました。う〜ん、謎(笑)。

 これまでも行動分析学からビジネスやマネジメントについて書かれた本は、拙著『パフォーマンス・マネジメント』を含め、数冊あります。でも、日本や海外における具体的な事例が掲載されている本はこれが初めてだと思います。
 M&A行動分析学?と疑問に思われる方は、去年、CLGが開催したセミナーの資料をご覧下さい。数々の大規模M&Aを成功させている、JTの新貝康司氏(現代表取締役副社長)もパネリストとして登壇されたセミナーです。

 海外進出に伴い、現地社員や顧客とのやりとりで文化の差につまづく企業もあると聞きます。国内でも、外国人を雇用したり、女性を登用したり、異世代の若手に活躍してもらうためには、これまで通りのやり方に限界を感じている経営者や管理職の方が多いのではないでしょうか。
 行動分析学には国や文化や世代を超えて適用可能な「行動の法則」と、国や文化や世代や個人に独特の“個性”や“多様性”に対応できる方法論があります。グローバリゼーションとダイバージョンが鍵になる次世代のマネジメントに、この方法論をぜひともご活用下さい。