自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

人はなぜファミコンのカセットに息を吹きかけるのか?


 この動画を紹介したこの記事を読みました。脳科学と無関係じゃんというところはさておき、ファミコンのカセットに息を吹きかける行動(“ニンテンドー・ブロウ”というらしい)が、ほんとに因果の誤謬なのかという話。

 カセットと本体との接点が悪くなるのは錆とか埃が原因だと思います。錆の場合、息を吹いてもとれないでしょうが(だから、自分はCRCとか使ってました)、埃ならとれるかもしれないし、何より、カセットを出したり入れたりすることで接点が研磨されて通電するという随伴性があるのではないでしょうか。

 つまり、部分的あるいは確率的な因果はあるのではないかと。偶発的強化による迷信行動というよりは、モデリングや伝聞されたルール支配がきっかけでVRで強化されている行動のように見えます。完全に迷信行動なら、反応形が人によってもっと多様になるのではないでしょうか(カセットを振るとか、机の上でトントンするとか)。

 また、人によってはルールを記述することなく、ほぼ“無意識的に”吹いているかもしれません。その場合には、“因果の推論”さえないのだから“因果の誤謬”とも言えないと思います。あるいは“因果の推論”なしにも、“因果の誤謬”に見える現象は生じるということでしょうか。

 ちなみに上の動画でもこの記事にある画像からもわかるように、NESという略称して親しまれていた米国で販売されていた“ファミコン”は日本のファミコンとは全く異なる外装で売られていたようですね。