自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

近所の子どもに野球を教えている大人へ:脅さず、叱らず、すべきことを伝え、できたら褒めてあげて下さいよ。

週末になると近所の公園は野球少年やサッカー少年たちでいっぱいになる。最近は男女が一緒に練習しているから、正確には少年少女たちだ。

地元のチームなのか、その中に大人が交じっていて、ノックしてたりするのだが、これが酷い。

「あきらめんじゃんぇーよ」、「どこみてんだ、このくそぼけ」、「どうしてできねぇんだよ!!」の連続。

それでも子どもたちは「よろしくお願いします!」とか「すみません」とか、とても礼儀がいいし、一生懸命ボールを追いかけている。見ていて、正直、胸が痛くなる。そのうち、きっとどこかで折れるぞ、この子たち。

こういう大人の特徴。

まず、ノックしかしない。自分でキャッチの見本をみせているところを見たことがない。子どもと離れているから、身体的ガイダンス等で、たとえば膝を曲げる角度とか、キャッチする前の事前動作等を誘導することもできないし、しない。

ノックも適当。近距離のキャッチボールから始めて、次第に距離を伸ばすとか、あまり移動しなくて捕れるところから始めて、前後左右へ移動しないと捕れない球をだすとか、そういうプログラムが一切ない。

子どもがすべきことの説明もない。どうすれば捕れるのか、落下地点に移動できるのか、コツの言語化ができないのかしらないのか。キャッチできなかったり、ポロリと落としたときに文句を言うだけ。それも、ちんぴらのような言葉遣い(昨日目撃した奴はサングラスかけていて見かけもなんだか酷かった)。

そして、何しろ褒めない。驚くほど、褒めない。かなり厳しいところに飛んだボールを子どもがキャッチしても無言。

うそでしょ、とあきれるくらいだ。

腹が立つので、公園の脇のベンチに愛犬と腰掛け(自分は犬と散歩中なのです)、「ナイスキャッチ!」とか「惜しい!」とか、赤の他人なのに声をかける。

サッカー教えている大人にはこういう大人はみかけない。パイロンとか小さなゴールとか、いろいろな仕掛けも持参して、ゲームみたいな方法も取り入れて、子どもがいい動きやプレーをするたびにめちゃめちゃ褒めてる。

野球はいくつかのチームをみかけるが、程度の差こそあれ、たいてい酷い。

なんなんだろ、あの差は。たまたま? それとも競技の文化なんだろうか?

お母さんたちの話では、監督やコーチが厳しくても、チームが強ければ子どももそのチームに行きたがるし、親も行かせたがるらしい。

でも、そのチームが強いのは監督やコーチの教え方が上手いからじゃなくて、酷いコーチでも我慢して練習するほど野球が好きな子どもや、そういうのに耐えてでも勝ちたい負けん気の強い子どもが残るからですよ、と言いたくなるが、犬の散歩仲間にそんなことを言っても仕方ない。

だから、自分はできる限り、ベンチから声をかけるのだ。変なおじさんと噂されてもね。

せっかくの休日を子どもの指導に使うというせっかくのボランティア精神も、あんな教え方では台無しです。せめて、この本でも読んで勉強して下さい。


コーチング―人を育てる心理学 コーチング―人を育てる心理学
武田 建

誠信書房  1985-09-20
売り上げランキング : 316528

Amazonで詳しく見る
by G-Tools