自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

大学入試改革:基本路線は賛成だが、もう一声(二声....)

入試、30年ぶり大改革 学力向上を大学期待(日本経済新聞, 2013/6/7) 文部科学省が導入を検討する新たな全国統一試験「到達度テスト」は高校在校中に複数回チャレンジできることが大きな特徴だ。

個人的には以前から提案してきた方向に一歩前進なので嬉しいニュース。

でも、

  • 文科省が作成するなら、高校ではなく義務教育の「到達度テスト」を作ることが先。
  • それも、PISA型学力ではなく、読み・書き・算術の「基礎学力」とせいぜい一般常識(理科、社会など):9割以上の児童・生徒が「到達」できるテスト。
  • これについては指導要領に即して、各学期、各単元で使えるテストをプールし、教員は無料でダウンロードして使えるようにする(教員がテストを作成しなくてすむようにする/教員の役目は児童生徒がテストを通過できるように教えること)。
  • 同じ問題を繰り返し使わなくてもすむように、ものすごく「多数」作ること(初期投資はかかるが、全国すべての学校で共通に使えて、教員の手間を省け、品質も高く維持できるなら安いもののはず)。

高校については、基礎学力+αの「到達度テスト」でよいと思うが、

  • これについては民間に任せる(諸外国はそうだと思う)。
  • 民間で複数の異なるテストが開発され、大学側がその質を確認しつつ採用することで、競争や品質管理を促す。
  • 特に「+α」の部分は、生徒の得意な分野を延ばす、様々なテストがでてきていいと思う(それこそPISA型学力とか、あるいはコミュニケーションに特化したテストとか)。そうすれば単純な序列化を防ぎ、大学としても多様な学生の受入を積極的に進められる。
  • 基礎学力の問題については、天井効果を避けるために、正答率(正答数)だけではなく、流暢性(正答スピード)も測定すること。

上記の記事には、都立高校の50代の副校長の声としてこんな記事があるが、正直、理解できない。

少しでも良い点数を目指して何度も受ける生徒は多いだろう。生徒も教諭も試験に追われる生活を送ることになりかねない。

少しでも良い点数を目指して「勉強し」何度でも受ける生徒がいるなら、いいことじゃないか。

「生徒も教諭も試験に追われる生活」というが、今はどんな生活なんだろうか。勉強は学生の本業のはずである。もちろん、余暇や部活や友達や家族との時間も重要だが、そのあたりのバランスは学生本人が主体的に決められるはず。そうでないのなら、自立的にバランスの取り方を教えるのも教員の仕事である。