自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

『自閉症児の発達と教育—積極的な相互交渉をうながし、学習機会を改善する方略』

ケーゲルらの研究グループは、自閉症児への最も効果的な教育は日常場面での自発的なコミュニケーションの指導であると考え、子どもたちが遊びの場面などで自発的に質問するスキルを教えるプログラムを開発してきている。この本はその理論的背景も含めた解説書。

たとえば、指導者と子どもが机をはさんで座って、「これは何?」「えんぴつ」というやりとりをするより、遊びながら子どもから「これは何?」と聞けるように指導する。

このように、それを教えれば、あとは日常生活の自然なやりとりでボキャブラリーが増えたり、コミュニケーションのレパートリーが広がるような「要となる行動」(Pivotal Behavior:ただし、本書では「機軸となる行動」と訳されている)」を見つけていくのが彼らの仕事の特徴で、注目に値するところ。

親指導プログラムやソーシャルサポート、IEP作成における課題などに関する章もあり、特別支援教育に関わる先生方にはぜひ読んでいただきたい一冊。

ただし、応用行動分析学の基礎的な知識なしに読むと話が見えないかもしれない。『自閉症へのABA入門—親と教師のためのガイド』(リッチマン,シーラ【著】 井上 雅彦・奥田 健次【監訳】・テーラー 幸恵【訳】)などを読んでからどうぞ。

残念ながら日本語訳は堅く(章によってバラツキあり)、誤訳も散見される。英語に自信がある人は原著を読んだほうが読みやすいかも。

自閉症児の発達と教育―積極的な相互交渉をうながし、学習機会を改善する方略自閉症児の発達と教育―積極的な相互交渉をうながし、学習機会を改善する方略
ロバート・L. ケーゲル リン・カーン ケーゲル Robert L. Koegel

二瓶社 2002-10
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