自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

『イチローは「天才」ではない』

野球は特に好きじゃないし、TV観戦もしない。でも、シアトルのセーフコ・フィールドでたまたま試合を観て、たちまちイチロー選手のファンになってしまった。

イチローは守備につくと、すぐにストレッチを始める。試合前のウォームアップではない。試合中、ずっと隙あらばストレッチなのだ。はっきりとした目標を持って、達成のための戦略をたてて、それを実行していくプロなのだ。

というわけで、たまたま本屋で目に付いたこの新書。イチローがなぜあれだけの成績を残せるのかを、いくつかの視点から分析している。どこまで科学的な裏付けがあるのか怪しいところもあるのだが、そこがまた面白い。

たとえば、オリックスの選手の視力測定をしている田村スポーツビジョン研究所代表の田村知則氏の分析として、イチローが他の選手よりも抜きんでている『目の能力』を

瞬間視能力:ほんの一瞬見えたものを素早く認識する。

追跡視能力:動いているものを追視する。

深視力:奥行きや位置関係を正しく認識する。

周辺視能力:視点の中心ではなく視野全体を丸ごと認識する。

探索視能力:たくさんの物の中から目的の物を瞬時に探し出す。

という5つの下位行動に分析している。これらは確かに課題を工夫すれば、独立に、高い信頼性を持って測れそうだし、多くのスポーツに共通の能力であるという意味で妥当性も高そうだ。

スポーツアトム研究会で取り上げてみてもいいかも。

イチローは「天才」ではないイチローは「天才」ではない
小川 勝

角川書店 2002-06
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