自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

自発的努力(Discretionary Effort)

discretionaryeffort-ADI

去る7月の日本行動分析学会で開催された、ダーネル・ラッタル(Darnell Lattal)先生の公開講座で話題になった『自発的努力(Discretionary Effort)』 についてのフォローアップ。

『自発的努力』とは、いわゆる正の強化には「やりたいから自分から進んでどんどんする」というプラスの効果があるが、負の強化には「やりたくないけど、最低限必要なことだけをする」というマイナスの効果があるという考え方だ。

公開講座のときにフロアからの質問にラッタル先生が答えていたように、科学的に証明された厳格な法則というよりは、経営者や管理職などに正の強化の大切さを伝えるためのプレゼンツールであると考えた方がいいだろう。

この図はわかりやすくてインパクトがあると思ったので、引用できる文献について後でラッタル先生に質問したのだ。

そこで判明したこと。

『自発的努力』の考え方やこの図は、オーブリーダニエルズ・インターナショナル社(以下、ADIと略記)が著作権と商標を獲得しており、ADIに無断で商用利用することはできないようになっている(ライバルのコンサルティング会社がたびたび同社の知的財産権を侵害することをしたためこのような措置をとったらしい)。

ADIは行動分析学やパフォーマンスマネジメントの考え方が世の中に広まっていくことにはもちろん積極的である。ラッタル先生のご好意で、以下の情報をいただいた。『自発的努力』の概念や図を引用する場合には参考にしていただきたい。

『自発的努力』の概念については、以下の文献から引用できる。

Daniels, A. C. (1994) Bringing Out The Best In People: How to Apply the Astonishing Power of Positive Reinforcement. NY: McGraw Hill. Aubrey p. 52.

Daniels, A. C. (2000) Bringing Out The Best In People: How to Apply the Astonishing Power of Positive Reinforcement (Updated Edition). NY: McGraw Hill. Pp. 28, 34, 53-62.

Daniels, A. C. (2001) Performance Management: Changing Behavior That Drives Organizational Effectiveness (4th Edition). NY: McGraw Hill. Pp. 65-66, 67, 194.

「Bringing Out The Best In People」は、残念ながら語訳が多いのであまりお勧めしていないのだが、日本語に翻訳されている。

『ベストを引き出せ—部下の業績を最大化するリーダーシップ』オーブリー・C. ダニエルズ (著)・梅津 祐良 (翻訳) ダイヤモンド社 (1995/09)

また、もうすぐ出版される The Measure of a Leader (2005) でも『自発的努力』に関する記述があるそうだ。

残念なことに『自発的努力』の図は上記の文献には掲載されていない。ADIの提供するワークショップやセミナーの資料にあるのみである。

図を転載したい場合には、ADIに連絡してその許可をとって欲しいとのこと。ADIのHPに"Contact Us"というところがあるので、使って下さい。営利目的の場合には書面での契約が必要になるそうです。