自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

もしドラッカーが行動分析家だったら:ドラッカーの名言を行動分析学から解釈する(その7) 「リーダーとは何か」

名言〔第24位〕:「リーダーとは何か」 (これだけだと「リーダーとは何か」がわからないので引用します)。

効果的なリーダーシップの基礎とは、組織の使命を考え抜き、それを目に見える形で明確に定義し、確立することである。リーダーとは、目標を定め、優先目標を決め、それを維持する者である(「未来企業」p. 147 )。

解釈:リーダーとは組織に係るメタ随伴性を分析し、組織として、どんな条件のとき、どんな行動をすれば(どんな製品を造り、サービスを提供し、などなど)、社会から強化されるのか、すなわち組織のメタ随伴性ルールを、現在と将来にわたって記述し、社会から強化される行動が組織としてまとまって遂行できるように、個々のフォロワー(社員、部下など)の行動を引き出す弁別刺激や確立操作を提供する役割である。

ちなみに、昨今の、特に安倍政権以降(ポスト小泉)の日本政府の動向をみていると、リーダーシップはリーダーだけに帰属させるべきものではないとつくづく感じる。組織がその使命をまっとうするためには、フォロワーの行動も等価に重要である。リーダーの示すルールと反する行動に従事することで強化される随伴性が、ルールに従う行動を強化する随伴性よりも強い場合、どんなに優れた「資質」を持った人がリーダーとなってもうまくいくわけはないからだ。個人的には、安倍氏がいとも簡単に総理の座から退いたことで、総理を降ろす行動の強化随伴性が、おそらくこれまでもあったのだろうが実際に機能してしまい、またそうした行動が弱化されることが少ないことがバレてしまったため、もはや誰もリーダーに従わないという悪夢のような状況になってしまっているのではないかと思う。菅総理の個人的資質はさしおいて、このことの方がはるかに大きな問題である。

本シリーズの過去記事一覧:

第25位:「成果をあげるのは才能ではない

第26位:「組織の存在意義

第27位:「組織は戦略に従う

第28位:「利益とは目的ではなく条件

第29位:「理論は現実に従う

第30位:「総体は部分の集合とは異なる