自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

もしドラッカーが行動分析家だったら:ドラッカーの名言を行動分析学から解釈する(その6) 「成果をあげるのは才能ではない」

名言〔第25位〕:「成果をあげるのは才能ではない」

解釈:成果をあげる人(performers)とそうでない人(non-performer)の違いは“才能(talent)”という仮説的構成体によるものではなく、習慣や行動やルールによるものであるというのは、まさに行動分析学の考え方そのものである。「才能」や「能力」といった概念に成功や失敗の原因を求める限り、循環論を抜け出せず、改善の手がかりは得られない。成果をあげている人が何をしているのか(何をしていないのか)、成果をあげていない人が何をしているのか(何をしていないのか)、まずは観察し、行動レベルでの違いをつきとめることが重要である。

もう一つ。ドラッカー先生はこういう見方がなかなかできない理由を「組織」というものが私たち人間にとっては比較的新しい“発明”であるためとしている。組織の中で成果をあげるための思考方法も進化(集団、世代としての学習)していくものだという考え方は前向きで面白いと思う。

本シリーズの過去記事一覧:

第26位:「組織の存在意義

第27位:「組織は戦略に従う

第28位:「利益とは目的ではなく条件

第29位:「理論は現実に従う

第30位:「総体は部分の集合とは異なる