自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

もしドラッカーが行動分析家だったら:ドラッカーの名言を行動分析学から解釈する(その3) 「利益とは目的ではなく条件」

名言〔第28位〕:「利益とは目的ではなく条件」

解釈:企業活動という集団行動は経済的好子(利益)ではなく、社会的貢献(生みだすべきモノやサービスを生みだしているかということ)や顧客サービス(生みだすモノやサービスが顧客にとって充分な好子や強化になっているか)という結果によって強化されるべきである。利益はむしろそうした行動を自発する機会を整えるという意味で、確立操作や弁別刺激、オペランダムのようなものと捉えられる。あるいはそうした行動が自発されいれば副次的に生みだされるはずの環境変化とも考えられるだろう。ただし、好子出現をもらたらす確立操作や弁別刺激、オペランダムはその機能ゆえに強力な習得性好子となるため、企業活動はとかく目先の利益に制御されがちなことも事実である。したがって経営者としては、そのままにしておくと敏感になりがちな経済的好子だけではなく、社会的貢献や顧客サービスにも敏感に反応するように、企業内部の行動随伴性やルールを設定する必要があるのだ。


本シリーズの過去記事一覧:

第29位:「理論は現実に従う

第30位:「総体は部分の集合とは異なる