自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

もしドラッカーが行動分析家だったら:ドラッカーの名言を行動分析学から解釈する(その28) 「知りながら害をなすな」

名言〔第3位〕:「知りながら害をなすな」

(これはヒポクラテスからの引用のようです)

解釈:

 顧客の“信頼”とは、企業の製品やサービスや宣伝やブランドそのものが購買行動の弁別刺激となることである。
 弁別刺激は刺激と強化の一致によって形成される。
 「私たちの会社は顧客に必ず強化を届けます」という言語行動は、それが事実と完全一致することがないため(言行不一致となり)、“信頼”の弁別刺激を形成できない。せいぜい可能なのは「私たちの会社は顧客にできる限り強化を届けるようにベストを尽くします」という言語行動である(これなら事実と完全不一致することはない)。
 一方で「私たちの会社は顧客に害があるとわかっている嫌子は届けません」という言語行動は自発し(約束し)、言行一致を守らなければならない。守らなければ“信頼”の弁別刺激が破綻するどころか、企業のブランドが“疑惑”、つまり習得性の嫌子となり、購買行動回避を強化してしまう。ブランドや商品へのタクトも変容し、言語共同体から強化も受けるので、その回復は容易ではなくなる。

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