自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

もしドラッカーが行動分析家だったら:ドラッカーの名言を行動分析学から解釈する(その26) 「明日のために昨日を捨てる」

名言〔第5位〕:「明日のために昨日を捨てる」

解釈:

 行動、特に組織における行動は、その行動がそもそも強化されていた随伴性がなくなってからも、別の制御変数によって自発され続けるものである。たとえば、もう必要のない書類をこれまで書いてきたからという理由だけで書き続けたり、売れ行きが落ちている製品をその製品が売れなくなってきている理由を検証することなく作り続けたり。
 企業にとっての、そして顧客にとっての強化や好子を生まない、強化履歴によってのみ制御されているこうした行動はコストとなり、企業がマーケットの随伴性に敏感に適応していくことを妨げる。
 社会や市場、企業内の随伴性の変化を迅速に察知し、古い行動の自発が新しい、より適応的な行動が自発される機会を奪わないように、組織内の補完的な随伴性(ワークフローや内規、工程、仕事の進め方の取り決め)などを随時修正していく行動が強化されるように環境を整えるべきである。

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