自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

もしドラッカーが行動分析家だったら:ドラッカーの名言を行動分析学から解釈する(その14) 「優先順位を決める原則」

名言〔第17位〕:「優先順位を決める原則」

解釈:

 優先順位の決定(すなわち選択反応)に及ぼす変数のうち、過去の成功(強化履歴)、目の前にある問題を解決すること(確立操作+逃避による強化随伴性)、他の会社や製品・サービスの成功を追うこと(モデリング、ルール)、新しい試みをすることで生じる抵抗や失敗の回避(反応コストによる弱化、回逃避・回避による強化随伴性)は、将来の成功につながる選択肢とは異なる反応を引き出し、強化してしまう可能性がある。市場や経営に関わる随伴性は常に変動していて、過去に強化された行動が将来にわたって強化され続けるという保証はないからである。

 このため、経営に関する意思決定をするときには、優先順位を決めるときに自らの判断に及ぼすこうしたバイアスを知り、過去や現在の随伴性では強化されていない選択肢を敢えて選ぶ必要があることがある。つまり、未来の、不確定な強化随伴性を記述したルールに従う選択反応を「勇気ある選択」とタクトし、社会的承認の随伴性を追加しておくことが重要になる。

本シリーズの過去記事一覧: