自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

もしドラッカーが行動分析家だったら:ドラッカーの名言を行動分析学から解釈する(その13)「信頼するということ」

名言〔第18位〕:「信頼するということ」

解釈:
 部下がリーダーについていくかどうかは、リーダーの言行一致度とその一貫性にかかっている。言語行動と非言語行動が一致していること(やるといったことをやる、やらないといったことはやらない)、一致した言語行動と非言語行動が一貫していること(やるといったことは納得できる理由がない限りやり遂げる)が重要である。
 部下がリーダーのことを「好き(like)」と言うかどうか、リーダーの言うことに賛成しているかどうかは、必要条件ではない。
 言行一致度と一貫性が高く、リーダーの指示に従う行動が高い確率で強化されれば、リーダーの言語行動が生みだす言語刺激は部下にとって強化の弁別刺激となる。さらにそのことで、リーダー自身が部下にとって習得性の好子になる可能性は高く、ゆえに「好き」という評価が増えることもあるだろう。ただし、これはあくまで副次的な効果である。「好き」という評価を増やす方法は他にもあるだろうが(例:やたらと褒めるなど)、追従行動に影響するとは限らない。

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