自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

行動分析学から心理学の基礎概念を解釈する(その12):ホーソン実験とホーソン効果

定義:
 ホーソン実験とは「1924年から32年にかけてシカゴのウェスタン・エレクトリックのホーソン工場で実施された一連の研究」(『組織行動のマネジメント』p. 176、S. P. ロビンス、ダイヤモンド社)である。適度な照明などの労働環境を科学的管理法の視点から探るのが目的であったのがそのような変数は生産性に影響を与えず、実験に参加した「少数のメンバーが、そのように期待されるとそのように行動する」(『組織の心理学』p. 138、田尾雅夫、有斐閣ブックス)という成果に終わった。これが、いわゆる実験者効果を確認したと、ネガティブに捉える解釈が広まり、ホーソン効果というと実験者効果(観察者効果)を意味することが多い。

行動分析学的解釈:
 ホーソン実験とそのデータはその後、さまざまな研究者から最解釈が試みられていて、その解釈は定まっていないが、そのうちの一つが、パフォーマンスフィードバックやペイ・フォー・パフォーマンス、すなわち作業に対する強化随伴性によって作業効率の増加を解釈する考えであることはあまり知られていない。
 Parsonsは下記の論文で、リレーの組み立て作業実験について、組立て個数のフィードバックや給与の一部が歩合制になっていたことによる、賃金による強化随伴性が効いていた可能性を指摘している(実験者効果と随伴性効果の混交)。

  • Parsons, H. M. (1974). What happened at Hawthorne?. Science, 183(4128), 922-932.
  • Parsons, H. M.  (1978).  What Caused the Hawthorne Effect?: A Scientific Detective Story.   Administration & Society,10, 259-283.
  • Parsons, H. (1992). Hawthorne: An early OBM experiment. Journal of Organizational Behavior Management, 12(1), 27-43.

 余談ではあるが、ホーソン実験に参画していた研究者の一人である T. N. Whiteheadとスキナーとの関係性・関連性が下記の論文に推察も含めてまとめられている。Whitehead氏の父がやはりハーバード大学の哲学の教授であり、息子さんも同席した会合での、父 A. N. Whiteheadとのやりとりから、Verbal Behavior の執筆が始まったとのことである。

  • Claus, C. K. (2007). B. F. Skinner and T. N. Whitehead: A brief encounter, research similarities, Hawthorne revisited, what next?. The Behavior Analyst, 30(1), 79-86.

本シリーズの過去記事一覧: