待望の新書判『行動分析学入門』登場!
望月昭先生(立命館大学)が評するように、まさに“1日で読める行動分析学の基礎テキスト”としてお奨めの一冊。
一つだけ気になったこと。
副題のとおり、本書では行動随伴性の考え方を“ヒトの行動の思いがけない理由”として紹介している。
たとえば、メガネをかけるのは目が悪いからではなくで、メガネをかければよく見えるから(強化されるから)というように。
それを説明するのに次のような図を使っているのだが、これが初学者にとって誤解の元にならなければいいなぁと、少々心配している。
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この図では時間が左から右へ流れている。つまり、メガネをかけるという行動が現在の行動なら、よく見えるという結果は未来の事象ということになる。
未来の事象で現在の行動を説明するのは目的論(テレオロジー)といって、行動分析学では一般的には否定している考え方だ。もちろん、この本では目的論を採用しているわけではない。
メガネをかけたらよく見えたということ(強化されたということ)が原因になっているのは、現在の行動に対してではなく、次回、同じような、よく見えない状況になったときにメガネをかけるという行動にとってなのである。すなわち、メガネをかけてよく見えたから(原因)→次に見えにくくなったらメガネをかける(行動)という因果関係だ。
これをあえて図にするとこうなる(クリックすると拡大します)。
取り越し苦労に終わればいいが、念のため(年寄の冷や水ってこういうこと?)。