自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

京都議定書 発効見通し

ずいぶん前になるが、地球温暖化防止のための京都議定書がようやく発効する見通しとなったという新聞記事を読んだ。ロシア政府が批准を閣議決定したからだ。

地球温暖化防止というと、環境問題に取り組む、きわめて倫理的・道徳的な話かと思いきや、ロシアが批准に賛成した理由は、まことに経済的な理由らしい。

記事によれば、ロシアはCO2排出権の巨大輸出国になるらしく、ようするに自国の利益になる条件が満たされたため、賛成したというわけだ。環境を守るとか、モルジブが沈むのを防ぐとか、そんな理由ではないわけだ。

A:先行条件 B:行 動 C:結 果
自国のCO2排出量が少ないとき 京都議定書を批准する 排出権を売ることができる(↑)


京都議定書が発効されると、日本は逆に排出権を買わなくてはならなくなる。にもかかわらず、発効を推進したのはなぜか? 

日本人ってそんないい民族だっけ?っと考えると、実は、日本はCO2排出量を削減するための技術を持っている国であることがわかる。省エネの技術では国際的にみてもピカいちらしい。

つまり、排出権を買わなければならないと同時に、長期的にみれば、そうした技術を輸出することで国益につながるのである。

A:先行条件 B:行 動 C:結 果
京都議定書が発効されると CO2排出削減技術や省エネのノウハウを売る 買ってもらえる(↑)


国を動かすには、倫理的・道徳的な随伴性では不十分で、経済的な随伴性を整備する必要があるということだろう。