- 講義科目,実習科目は非同期型にして(たぶん)正解。講義動画の再生数は受講生数の120-150%くらい。途中で再生やめたり,あとから見直している学生が相当数いるということ。これは対面授業では実現できない長所。2月にYouTubeで実施した大学院発表会では,自分もほぼ1.7倍で再生し,説明がわからないところだけリピート再生していた。学生個人のペースで講義を聴けて,つまらなければ早送りすることだってできる。
- 1に関連して。リアルな講義だと「もっとゆっくり話してください」と言われることが多いので気を使って話をしているのだが,受講生が再生速度を変えられるのだから,講義動画では遠慮なく早口(自分としては普通の速度)で話していて気持ちがいい。でも,いまこれ書いてて気づいたが,知らない学生もいるかもしれないから再生速度を変える方法は教示しよう。
- 講義はスライド+自分(左下に小さく)の動画と,音声だけの配信の両方を提供しているのだが,学生からのアクセスはほとんど動画。スライドのPDFをダウンロードしてそれを見ながら音声のみ聴いてもいいわけだが,きっと今どこを話しているのか動画の方がわかりすいのだと思う。
- 通信量は音声のみの方がもちろん少なくてすむけど,YouTubeのようなストリーム配信は受信者が画質落とせば節約できるし,ほぼ静止画のスライド映しているだけなら画像情報もたいしたことない。スマホなら通信量も少なくなるように設定されているし。このあたりのことを知らない大学の先生はけっこういそう。
- カメラも使うと,ジェスチャー使ったり,ものを映したりできるのが便利。測定誤差を説明するのに,机から定規だして見せたり,学会誌を説明するのに棚から行動分析学研究や心理学研究だしてきて見せたり。あらかじめスライドに入れ込むのは準備がたいへんだから,その話その場でささっと補足できるのが便利。
- ゼミのみ時間割通りにZoomで開催。実験室実験もフィールドでの実験もとうぶんできないという大問題を除けば,特に問題なく進行中。通常通り,毎回全員が発表しているし,毎回全員が課題を提出している。ブレークアウトでのチーム討論も問題なし。Zoomで顔や部屋が映ることに抵抗があるという学生もおらず(発表や話し合いで忙しいからだと思う),課題は新歓が待ち遠しいくらいか。
- ゼミも授業も,従来から各授業回の資料やスライド,課題などはすべてGoogleドキュメントにまとめていて,そのあたりのオンライン化は完了したから,その点はラッキーだったと思う。
- アンラッキーだったのは"アクティブラーニング"(という言葉は好きじゃないけど)。担当するほぼすべての授業は授業内で学生同士が話し合いながら課題を進める濃厚接触構造になっていたので,この成分をオンラインでどう実現するかが今後の課題。当座は自分からの課題へのコメントを増やすしかないかなと思っている。
- 主に1年生向け心理学実験実習では3つやる実験のうち2つをPsychopy+Pavloviaで作成。もう一つはどうしてもデバッグが進まないのでYouTubeで刺激提示することにした。通常時は受講生が実験者になる機会が設定できるのだが,今回はあきらめ,そのぶん各実験に関する文献調査などの比重を上げることにした。
- 非同期型の授業で驚いたのは,課題を早々に提出してくる学生がかなりいること。たとえば提出期限が十日以上先なのにもう半数近い学生が提出していたりする。期限が過ぎた課題はまだ一つしかないのだが,その提出率が約90%。履修登録した学生が全員受講するわけではないので,この数値はほぼ100%に近い。通常時の授業形態は学生個人のペースにあわせることができていないということが顕になったと思う。
- 10に関連して。つまり,オンライン化というよりも,実は学習の個別化(個人ペース化)の利点が大きいということ。ケーラー先生のPSI(Personalized Systems of Instruction)に時代がようやく追いつく可能性がある。ただ,このままだと課題を提出できない学生もでてくるだろう。大学にきて,友達と一緒に教室にくるという流れで,授業内演習に参加して課題を提出できていた学生たちの行動が,そういう社会的随伴性がないときにどうなるか注意深くみなくてはならない。
- 心理学実験実習に関しては,新入生がお互いを深く知り合う機会の一つになっている科目だと思うので。このあたりのサポートはなんとかしてあげたいと思っている。対面で面識がまったくないところでZoomなんかしてもうまくいきそうにないのだが,どうなんだろう。ここが5-6月の重点課題になりそうな予感。