自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

『行動生物学辞典』 動物のお仕事をしている人には必読書となるでしょう。

 とても面白い辞典がでました。

 序にあるように、行動生物学は動物の行動を研究対象とする生物学の総称で、動物行動学、応用動物行動学、動物心理学、行動分析学、比較認知科学、神経行動学、行動薬理学、行動遺伝学、人と動物の関係学などを含む学際領域です。こうした諸学問(諸学会)の“横のつながり”によって生まれた、我が国初の成果だそうです。

 ざっと項目をみていくと、行動分析学の基本的な概念がかなり網羅されています。行動分析学の辞典がない現状では、本書がその代用になると思いますし、関連諸学問の用語も学べるという意味で(そして関連諸学問の専門家の方々が行動分析学の用語を学んでいただくのにも)ベストチョイスとなるでしょう。

 辞典ですから一頁めから順に読むようなことはないはずなのに、そうしてしまいそうなくらい面白いですし、読みやすいです。「あ」にはいきない犬のあくびの実験の様子を写した写真が掲載されていたりします(犬のあくびの実験についてはこの記事を参照)。

 ここのところ続けて記事を書いてきた「権勢症候群」については、この辞典では「優位性攻撃行動(アルファシンドローム)」となっています。「これまでイヌの飼い主に対する攻撃行動の多くは優位性攻撃行動と診断されていたが、動物種の異なるイヌとヒトの間に社会的順位が成立するかどうかは疑問視されている」(p. 533)と書かれています。

 写真やイラストも多く、閲覧できる動画のURLまで掲載されています。数年先でもいいからiPadなどで読めるカラー、電子版、動画もありといった改訂版がでることを期待します)。

行動生物学辞典 行動生物学辞典
上田 恵介

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