自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

「エルスバーグのパラドックス」まさかの都市伝説?(未確認情報)

今日の日経新聞の経済教室(神経経済学)で大阪大学の田中沙織先生が紹介している「エルスバーグのパラドックス」。人の曖昧性回避傾向を示す実験として、あちこちで引用されているが、実験の詳細が少しずつ違う。

そこで原著で確かめようと調べたのだが、なかなか見つからない。

ようやく見つけたのが、この論文。

Ellsberg, D. (1961). Risk, ambiguity, and the savage axioms. Quarterly Journal Of Economics, 75(4), 643-669.

数理経済学(?)の理論的な論文(だと思う)。心理学の研究ではありません。

壷の実験の話もでてくるが、内容はすごく複雑。数学的解釈をしていて、斜め読みでは理解できない。

で、なんと! 少なくともこの論文では、壷実験は机上の思考実験(hypothetical experiment)なのだ。

データとってないよ〜

Chipman という人がほぼ同じような実験をしていて、思考実験の予想通りの結果をだしていると書いてあるけれども、この文献は未確認(in Decisions, values, and groups, Ed. D. Willner, 1960)。

ダニエル・エルスバーグ(Daniel Ellsberg)という人、一般的には、秘匿されていた米軍の機密情報(「ペンタゴン・ペーパーズ」)を内部告発した人として有名だが、壷実験はまさかの都市伝説?

しっかり実験していてデータが示されている原典をご存知の方は教えて下さい。