自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

久しぶりに身をもって学んだ「学び手はいつも正しい」:座椅子のカバーは「−1」で。

日曜、テニス仲間に頼んで、はるとの散歩の様子を録画してもらいました。山本先生に近況をご報告し、フィードバックをいただくためです。この話はまたいずれ。

もう一人の友達には、散歩に行っている間に、洗濯するので座椅子のカバーをとっておくよう頼みました。

うちの座椅子は楽天で購入した「ポーラ」です。3カ所が14段階でリクライニングするという優れものです。

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はるに齧られても放っておけるように(止めに入って齧りを強化しなくてすむように)、カバーを二重にしています。

なので「カバー2枚かぶせてあるから、よろしくね」と指示しました。

これが私の思い込みで、間違った指示だったことが後に発覚します。

散歩から帰ってくると、出かける前は上の写真のように美しかった座椅子が、2台とも(!)、下の写真のように無惨な姿になっていました。

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これじゃまるで「Air」でエヴァシリーズに逆襲されて倒れた弐号機です。

友達を問いつめると、

  • 「だって2枚って言ったじゃん」
  • 「確かに2枚めはものすごく外しにくかった」

と言います(反論します)。

そう。追加でかぶせていた取り外し可能なカバーは一枚だけで、もう一枚は座椅子本体のカバーだったのです。

なんとか元に戻せないかと奮闘しましたが、カバーと本体が嘘のように複雑な構造になっていて、触れば触るほど、ウレタンが崩れ、フレームが剥き出しになり、いよいよ弐号機状態。目玉が現われても怖いので、そこであきらめ、月曜に家具通販のロウヤ(販売元)に問い合わせることにしました。

電話対応の女性はとても丁寧で、製品開発の部署にも問合せてくれましたが、

  • 構造が複雑なので(お客様の手で)元に戻すのは難しい。
  • 修理は行っていない。
  • (捨ててしまうのももったいないので再利用のために送り返しましょうか?と聞くと)お気持ちはありがたいが、修理後の再販は一切行っていない。

とのことでした。

この座椅子、累計11万台以上が売れているそうですが、このような問合せは初めてだそうです(このとき女性が笑いをこらえていたように感じたのはやはり私の被害妄想でしょうか)。

さて、こうなると、いくら「カバー2枚かぶせてあるから、よろしくね」と言ったからといって、二枚めのカバーが取りにくかった時点でやめておけばよかったのに。あるいは一台めが無惨な姿になったのを見た時点で二台めから取るのは一枚だけにして、そこでやめておけばよかったのに。それが《常識》じゃないか?と思いたくなります。だって1/110,000の確率ですよ。《常識》をゆうに外れて統計的にまったく有意な確率です。

しかし冷静に振り返れば、そしてインストラクショナルデザインの考え方の本道を貫くのなら、やはり「学び手はいつも正しい」です。

そもそも取り外し可能なカバーの枚数を私が確認してからお願いすべきでした。ロウヤさんに、裏面のタグか何かに「このカバーは取り外してはいけません」という注意書きを期待するのは、1/110,000という発生確率からも、そしておそらく小さいタグは見逃され、大きいタグはデザイン上不利であるという事情から無理でしょう。

思い込みや《常識》に頼ったことで2万円以上の損失がでましたが、いい勉強になりました。

結論:「学び手はいつも正しい」&「座椅子本体のカバーは決してはずさない」。

さて、春休みの間、けっこう頻繁に更新してきたこのブログですが、いよいよ昨日から新学期が始まったこともあり、この後はスローダウンする予定です。

新学期とはいっても、実は、私、今年はサバティカルで大学はお休みです。授業も会議もない天国のような一年間が待っています(天国には行ったことがないけれども)。とはいえ、通常ならおそらく三年はかかるような仕事量をこの一年でこなすつもりなので(主に執筆です)、それと両立しない行動の頻度は極端に減ることが予想されます。

まぁ、ぼちぼちと。