自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

応援の心理学

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 先週の金曜日、夏休み最後の余暇活動として、デビスカップワールドリーグ入れ替え戦、日本対ドイツの初日、シングルス第一試合と第二試合を観戦してきました。コートサイドで杉田くんと錦織くんを応援。

 日本のテニス会場は静かなことで有名なのですが、この日ばかりはおそろの赤のTシャツを着て、バレーボールの試合でよくみるスティックバルーンをならす人が目立ちました。杉田くん所属の三菱電機の方々でしょうか。会場一角に陣取り、高校野球のような応援を繰り広げる一団もいました。

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 試合は下馬評では勝ち目薄しだった杉田くんが頑張り、錦織くんは力量をみせつけ、貴重な2勝をあげました。新聞記事によると、仙台出身の杉田くんは、試合中、「きつい場面で『仙台のみんなも頑張っているぞ』という声援があり、気持ちを立て直した」とのことです(日経新聞)。

 会場では「ドンマイ、どんまい」「ファーストいれてこ」「ばんかいしよう」「3本め〜」「ここ集中!」など、およそプロの試合では聞かれることのない声援(部活や実業団ではあるけど)がとびかい、若干苦笑していたのですが、そういう声援も杉田くんには力になったということでしょう。

 ところで、観客からの声援が選手にどのような影響を及ぼすのか、あるいは観客はなぜ声援するのかなどについての心理学の研究はあまりありません。

CiNiiで検索しても、みつかるのはこのくらいです。

  • 広沢俊宗・井上義和・岩井 洋(2006)プロ野球ファンに関する研究(V) : ファン心理、応援行動、および集団所属意識の構造(第二部スポーツファンへの多面的アプローチ,創造性の視点)    関西国際大学地域研究所叢書, 3, 29-40.
  • 元 晶?(Won Jung-uk)(2008)韓国プロサッカー観戦者の消費行動特徴に関する研究 :Kリーグ観戦者の人口統計学的特徴、観戦動機、観戦ニーズを中心に 環境と経営 静岡産業大学論集, 14(1) ,1-14.

 発達・学習という視点(いつごろから人を「応援」するようになるのだろう、どうやってそのスキルを獲得するのだろう)でも、余暇・QOLという視点(応援し、応援されることには、生活の質に対してどのような影響があるのだろう)でも、面白そうな研究がたくさんできそうです。

 実は、この「応援」に関する問いは某テレビ番組制作会社からの取材依頼で一度調べたことがあるテーマです。回答に返信なしの失礼なやつの一つでした。問いは面白いだけに残念。