自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

祝オバマとクレジットカード破綻

 圧勝でしたね。バラク・オバマ大統領候補。「チェンジ」で共通認識を作った合衆国民の皆さまを祝福です。こういうところはさすが。かなり感動。

 さてさて、黒人初の大統領が誕生するまでには、まだ時間がありますが、百年に一度と言われるくらいの金融危機はまったなしの状態のようです。

 先日、報道ステーションでは、米国の中産階級の人たちのクレジットカード破産を特集してました。サブプライム問題が表面化したと同時に激増しているそうですが、アメリカ人のクレジットカード破産は、前々から、知ってる人は知ってる、わりとありきたりの問題だったりします。

 特集では、米国のクレジットカードでは、我が国でいう「リボ払い」が一般的であることを指摘していました。初耳だったけど、考えてみると、なるほどと思うところです。

 「リボ払い」の場合、どんなにクレジットカードを使っても、月々の返済額は変わりません。限度額に達するまでは、ただただ、返済期間が延びて行くだけ。通常の1回払いであれば、カードで購入した月、もしくはその翌月には、そのぶんの金額が口座から引き落とされます。

 現金で買物をすると、支払いのときに財布からお金が消えていきます。つまり、購買行動は、好子出現による強化(購買して商品やサービスを入手)と、好子消失による弱化(購買して現金を失う)の並立随伴性で制御されています。

 クレジットカード払いだと、現金が財布からでていきませんから、弱化の随伴性はゆるく、だから購買行動が抑制されにくいわけですが、1回払いであれば、その額はそのまま一ヶ月くらいのうちに口座から引き落とされます。これに対して、「リボ払い」の場合は、数年後の支払期間が数ヶ月延びるだけです。これは塵も積もれば山となる型の随伴性。購買行動がいよいよ抑制されにくくて当然でしょう。

 クレジットカード破綻を減らしたいなら「リボ払い」を禁止すべきですね。

 もう一つ、これは留学していたときに考えていたことですが、米国では、給料の支払いが月単位ではなく、二週間に一度の人も多いです。子どものお小遣いも、庭の芝を刈ったら2ドル、というように、その時々でもらうことが多いようです。
 幼い頃からも、就職してからも、おこずかいや給与の月給制度に慣れてきた、私たち日本人にとっては、月の前半で持ち金が減ってしまうということは、次のおこずかいや給料日まで、困窮と生活していかなくてはならないことを意味します。二週間なら、ちょっと我慢すればなんとかなるかもしれません。でも、一ヶ月、学校帰りに友達と一緒に駄菓子を買って楽しめないのは辛いし、家庭生活なら崩壊です。
 もしかしたら、この月給制のおかげで、私たちはお金を貯めたり、計画的に使ったりする行動が、一般的なアメリカ人に比べると得意なのかもしれません。

 クレジットカード破綻をさらに減らしたいなら、おこずかいも給料も、月給制にするといいのかもしれません。