自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

学ばない症候群だとう(怒)

学ばない症候群@日経新聞(2006.12.5)・中学に入ったばかりなのに「もう勉強はあきらめた」「今さら追いつけない」と漏らす生徒が増えてきた。

・「授業が分からない」→「面白くない」→「勉強嫌い」→「勉強拒否」。多くの子供が今、この「負のスパイラル」に陥っている。

・「競争を勝ち抜いてきた大学生にも自主性、自律性が欠けている学生が多いように思う。知識や教養を深めず、漫然と社会人となる恐れがある」(耳塚寛明教授@お茶の水女子大)。

学生の行動に「あれ?」「おや?」と驚かされるのは確かに日常茶飯事である。最も目につくのは社会性、公衆道徳性の低下(というか欠如)。授業中にも関わらず廊下を大声ではしゃぎながら歩いていたり、キャンパス内の「禁煙」と明示してある場所でポイ捨てしたり、エレベータに他人が乗って待っているのにメールをしながらゆっくり入ったり出たりする。

学習に関しても、ちょっとした課題を与えると、すぐに「難しい」と言い、それを理由にあきらめてしまう学生が増えているように思う(「難しい」がタクトではなく、課題の難易度を下げたり、課題自体を取り下げるマンドとして習得/維持されているふうである)。

ところがその一方で、社会性も高く、倫理観や正義感の強い学生もいる。「難しいです」と言いながらも、へこたれずに指示されたことをやってみて、今までできなかったこと、わからなかったことが、できてきたり、わかってきたりすることに喜ぶ学生がいる。

先日、前任校の学部生から、拙書『インストラクショナルデザイン』を使って自主勉強会を開いているのだが、わからないところがあるので教えて欲しいというメールが届いた。涙がちょちょぎれるほど嬉しかった(ここにブログあり)。

「学生の質が落ちてきた」というのはいつの時代にも教師や大人側が言い続けていたことで、今に始まったことではない。確かに、個人差は大きくなってきているという印象があるが、学習環境を整えることで、多くの学生が学びだすのもまた事実なのだ。

「学ばない症候群」というような個人攻撃の罠にはまらずに、一見「負のスパイラル」に陥っている学生をどうすれば支援できるかを考え、実行していくのが教え手側がすべきことである。