機能的分析(行動随伴性の机上分析)を教えるのに、授業では『行動分析学入門』流ではなく、『パフォーマンスマネジメント』流の随伴性ダイアグラムを使っている。その方が短時間で簡単に理解しやすいからだ。
行動分析学の初歩を学ぶ上では有効だと思うのだが、それでもゼミ生までが「弱化」と「消去」を混乱するたびに、『行動分析学入門』流ダイアグラムの方が、概念の詳細で正確な理解には有効かもしれないと思い悩む。
たとえば、対面で指導中、課題が難しくてかんしゃくを起こしてしまう生徒の行動の機能的分析。
『パフォーマンスマネジメント』流ダイアグラムならこうなる。
A:先行条件 | B:行 動 | C:結 果 |
課題が難しいとき | 課題を机の上から叩き落とす | 課題をやらなくてもすむ(↑) |
嫌子消失による強化である。この学習環境を矯正するための改善策をダイアグラムで書くところまではできるのだが、
A:先行条件 | B:行 動 | C:結 果 |
課題が難しいとき | 課題を机の上から叩き落とす | 課題をやらなくてはならない(↓) |
この随伴性の名前は? と質問すると「弱化」という答えが返ってきてしまうのだ。
これが『行動分析学入門』流ダイアグラムなら次のようになる。
直 前 | 行 動 | 直 後 |
難しい課題あり | 課題を机の上から叩き落とす | 難しい課題なし(↑) |
直 前 | 行 動 | 直 後 |
難しい課題あり | 課題を机の上から叩き落とす | 難しい課題あり(−) |
行動の前後で環境が変化していないので消去であることがことがわかりやすいし、嫌子が出現していない(あるいは好子が出現していない)ので弱化ではないことも明白である。
よって、おそらくこのダイアグラムを使えば、「弱化」という答えは返ってこないだろう。
とっつきの良さをとるか、正確で厳密な思考力をとるか、考えどころである。