自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

データと教育とビル・ゲイツ

アメリカ合衆国政府(教育省)と民間の企業団体が協働で進める「Data Quality Campaign」という巨大プロジェクトが立ち上がった。

民間側の資金は主にマイクロソフトビル・ゲイツ(夫妻)からの個人的な基金によるものらしい。

上記のHPにあるプロジェクトの概要書を読むと、

・教育を改善していくためにはデータを元にした政策決定が欠かせない。

・現在は政策決定に使える有効なデータが収集されていない。

・行政はこの問題に気づいてはいるが、単独で解決するだけのリソースを持っていない。

・そこで、教育システムの改善に役立つデータを各州で収集し、かつ全国的に相互に利用できるような情報システムを民間が開発して提供する。

とある。

目標は2009年までに50州でこのシステムが運用されることだそうだ。

提案するシステムはWondows系なんだろうから、全く私利私欲がないわけではないんだろう(私利私欲があっちゃいけないってわけじゃないし)。

概要書には、

・縦断的データ(一人の子どもがどのように指導され、どのように学習したかを継続して測定する)の重要性。

・各州でそれぞれ独自に(中途半端に)お金をかけて同じようなシステムを作ってしまう無駄を省くことの重要性。

・そして、何よりも、政策判断を客観的データにもとづいて行なうことの重要性。

を強調している。

「州政府は児童・生徒の学びを促進するために何百億円もの予算を投じている。でも、質の高いデータなしには、目を閉じて飛行機を運転しているようなものだ」とまで痛烈に批判している。

プロジェクトの主旨には100%賛成だ。こんなことを私金で始められるゲイツ氏を羨ましくも感じる。

教育の改善という公の目標を、官と民がどうやって協働で達成して行けるかを探るプロジェクトとみなすこともできるだろう。

ゲイツ氏にエールを送りながら、お手並み拝見である。