自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

却下された反転法

時事通信総務省公害等調整委員会は30日、農水省が進める国営諫早湾干拓事業長崎県)と漁業被害との因果関係を認めるよう求めた有明海沿岸の漁業者の原因裁定申請を棄却した。裁定書は、申請した漁業者17人のうち15人の不漁による漁業被害を認定。ただ、因果関係については「高度のがい然性をもって肯定するには至らなかった」とし、データ不足などから解明できなかったことを明らかにした。

いさはやひがたネットなどに、水門と赤潮の因果関係が論理的に推定されているが、もっとハードなデータが必要ということらしい。

科学的なデータに基づいた政治は大歓迎だが、無策無政の言い訳に科学を使ってもらっては大迷惑だ。

実際、農水省が設置した第三者委員会が、因果関係を調べるためには水門を中・長期にわたって開放すべきだと結論している。まさに反転法の発想である。ところが、当の農水省がこれに抵抗しているらしい。

行動分析学では、何らかの事情で反転法が使えないときには多層ベースライン法など、他の実験計画を使う。

たとえば、世界各地の干拓事業から水門閉鎖と赤潮の発生や漁獲量の変化などのデータを集めて、疑似多層ベースライン的に分析できないものなのだろうか。