『音楽学習の設計—授業の成立のために』 R.ダグラス グリーア【著】 石井 信生・吉富 功修・弘中 知世子・野波 健彦・木村 次宏・藤本 和恵【翻訳】 音楽之友社 1990
グリーア(Greer)先生はコロンビア大学の教育学部の先生で、ケラースクールなど、自閉症児のための学校システム(CABAS)を開発した行動分析家として知られている。
実はグリーア先生は音楽教育にも造形が深く、音楽の個別化教授システム(PSI)を開発した人でもある。
本書は、音楽教育に行動分析学をどうやって活用できるかを解説した本。理論的な話から実践的な話まで幅広くカバーしている。行動分析学の翻訳本としては老舗で、『行動分析学入門』が世に出るはるか昔から書店に並んでいた本だ。
ただし、初学者向けではない。音楽教育と行動分析学の両方に詳しくないと、読んでもチンプンカンプンかもしれない。
たとえば、第8章では、音楽の芸術性、美的価値、情動的行動をどのように捉え、どうすれば指導プログラムに組み込めるかを、教育哲学的な考えと比較しながら論じている。
行動分析学というと、何でもかんでも客観的に測定しようとするから、どうぜ音楽と言っても、楽器を弾くスキルのような、技術的な行動にしか目を向けないんでしょ? と誤解している人も多いと思う。
もちろん、そんなことはない。
・“心を揺さぶられるような感動”を体験するとは、いったいどういうことなのか?
・そういう体験を味わうために必要な下位行動にはどんなものがあるのか?
そういう分析だってできるし、すべきである!と、この本には書いてある。難解だけど...
興味がある人はぜひチャレンジしていただきたい。
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