自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

『社会性とコミュニケーションを育てる自閉症療育』

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『社会性とコミュニケーションを育てる自閉症療育』Kathleen Ann Quill【編】安達 潤・笹野 京子 ・内田 彰夫 【訳】松柏社 2004(改訂版第3刷)

木曜に予定されている附属養護学校研究発表会の分科会で助言をするために、このところ、今話題の「ソーシャルストーリー」について勉強している。

「ソーシャルストーリー」とは、自閉症児が社会的な状況を理解できるように、実践家のキャロル・グレイという人が工夫して築き上げた手法で、高機能自閉症児やアスペルガー障害をもった、いわゆる軽度発達障害の子どもたちに、彼らが気づきにくい、あるいは誤解しがちな約束事や習慣、状況などを、紙芝居的に(視覚的に)わかりやすく伝える方法である。

この本の第9章にはグレイが執筆した「社会的状況の「読みとり」を自閉症の子どもたちに教える」が掲載されている。

今回は、電子図書館などを駆使して、ソーシャルストーリーの効果を検討した、実証的な研究を探してみた。少しずつではあるが、ABAB法や多層ベースラインなど、ある程度の実験計画を組んだ研究も発表されている。ただし、効果はあったり、なかったり。とりあえず限定的に効果があると言うべきかもしれない。

日本でも実践家を中心に「ブーム」になっているようだが、大学に勤める研究者の役割は、たとえ「ブーム」であれど、少なくともそれを知っておき、その上で、どんな子どもに、どれだけ有効なのか、あるいはどんな眼界があるのか実証的な研究を進めて、それを実践家と共有していくことだと思う。

そのうち徳島ABA研究会でも情報提供しようと思います。

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