自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

『マインドフルネス&アクセプタンス-認知行動療法の新次元』

行動療法学会のコロキウムで話題提供したときに、勉強のため、1ケースだけ事例発表会にも参加させていただいた。

そもそもこのコロキウムという催しは、学会会員が自らの事例を持ちより、他の会員から助言を受ける機会として設定されているそうである。一つの事例について1時間以上かけて発表と意見交換をするという方法は、通常の10分程度の口頭発表に比べると、話し合いも深まるから、特に発表者にとってはメリットが大きいと思われる。

取り上げられる事例は不安症など、いわゆる一般臨床が多いようだが、フロアからの助言には、機能的分析など、行動分析学的視点もあり、それが受入れられていることが私にとっては新鮮だった。日本では“行動分析学=発達臨床”という誤ったイメージが定着してしまっていると思っていたからだ。

もちろん、実際にはそんなことはなくて、行動分析学をベースに一般臨床をしている人たちもいる。特に最近では、認知行動療法的な味付けの手法だが、理論的な背景にはルール支配行動や関係性などを持つ臨床家も増えているらしい。

本書はそのような展開をまとめた、どちらかというと理論的な解説書である。具体的な事例がほとんど掲載されていないので、私のような門外漢にはとても読みづらかったが、全体的な傾向はつかめた。たぶん、初学者(特に行動分析学の初学者の臨床家)は最初の二章は読み飛ばした方がいいかもしれない。

個人的には、内的反応の条件づけなど、基礎実験につながりそうなアイディアにとても興味を持ちました。

完全に理解して読了するのはかなり難易度が高い本ですが、行動分析学から一般臨床をしたい人には必須でしょうね(他に日本語で読める本がないし)。

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