自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

パチンコはVR?

パチンコ屋はなぜ儲かるのか? 大西さんはVR強化スケジュールの特性として分析している。

パチンコ屋さんはなぜ儲かるのか@徒然なる随伴性日記パチンコに置き換えて言うと,パチンコをする行動は,たまに現れる勝ちやお金(好子)によって強化されています(部分強化)。勝ちやお金(好子)は,いつ現れるか決まっておらずいつも違います(VR)。変比率強化スケジュール(VR)の反応パターンとして「強化後反応休止がほとんど無く非常に速いペースで行動する,ただしペースは一定である」という原理があるので,負け続けていても思いがけず勝つとパチンコをする行動が強化され,パチンコ屋さん通いが続くという随伴性です(大西)。

ギャンブルを強化スケジュール(特にVR)の例として解説する行動分析家は多い。

だが『行動分析学入門』9章の展開編で分析しているように、コトはそんなに単純ではない。

パチンコのあたりはずれの仕組が何らかの強化スケジュールであることには間違いないが、そのスケジュールはとても複雑である(最近のマシンはすべてコンピュータ制御で確率を変動させている)。

それに、パチンコを常習している人の行動を観察していると、重要なのは打つ(とはいってももうかなり前からハンドル式だし)行動よりも、攻略を練る行動のようである。

コンビニの雑誌コーナーに、あれだけたくさんの攻略本がでていることからもわかるように、常習者は常に「どんな台をどう打てば出るか」を考えている。

打ち方についてはほとんどルール支配行動だと言っていいだろう。

パチンコの台を設計する方も、標的行動はそっちを重視しているのではないだろうか? 

つまり、いかに考えさせるか、ということ。

パチンコを打ちに店にくるのはそれを試しにくるだけ。たとえ負けても、考えていたことの一部が当たっていれば強化されてしまう。

ちなみにスキナーは、税金を課せられればカウンターコントロールで不平不満を言う市民でも、(公営)ギャンブルなら、“気持ちよく”“自分の意志で”納税してくれるだろうと分析している。

いずれにしても、いよいよ巧妙な集金随伴性であることに間違いはない。