自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

算数のかけ算における流暢性の国際比較研究(ようやく論文になりました)

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 実験したのはもう8年くらい前の研究になりますが、投稿して、あちこちでリジェクトされて(^^;)、昨年暮れにようやく受理された論文です。

 内容は、小学生のかけ算において、一桁のかけ算(下位行動)と二桁のかけ算(下位行動を含む上位行動)の正確さ(正答率)と流暢性(正反応速度)の相関関係を検討し、さらに国際比較したもの。論文では「elements → compound」と表現していますが、Precision Teachingの人たちが使う「composite → component」と同じです。

 正答率のデータだけをみると、日本、台湾、米国の子どもたちのパフォーマンスに有意差がみられないのですが、正反応速度は日本、台湾の子どもたちが米国の子どもたちを凌駕します。さらに、下位行動の正反応速度が高いほど、上位行動の正反応速度も高い(あたり前のようですが)。

 "創造性"とか"思考力"の育成と声高に叫ぶ前に、そうした上位行動の下位行動となるスキルをみつけ、その下位行動の流暢性をあげる、そういう地道だけど着実なインストラクショナルデザインの基本を確認した研究です。

 一時は「もう紀要でいいからだしちゃおうと」などと言っていた自分が少し恥ずかしいっす。忍耐強くチャレンジし続けたRick Kubina先生(Pennsylvania State University)を尊敬&感謝。共同研究者のFan-Yu Lin先生もお疲れさまでした。

 ダウンロード可能なジャーナルなので、興味のある方はここからどうぞ

Fan-Yu Lin, Richard M. Kubina Jr. & Satoru Shimamune  (2010).  Examining Application Relationships: Differences in Mathematical Elements and Compound Performance between American, Japanese, and Taiwanese Students.  International Journal of Applied Educational Studies, 9, 19-32.