自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

電子マネー:復帰と強化のダブル攻撃

電子マネーが普及し始めた。自分の財布にもPASMOSUICAEdynanacoが入っている(早く規格を統一して一枚で済むようにして欲しいもんだ)。

日経新聞の記事によると、電子マネーの利用客は、現金で買い物をする客に比べて、客単価が15%近く高いらしい(2007.6.14)。電子マネーを使い始めるような人がそうでない人に比べて経済的に余裕がある可能性もあるから単純比較はできなのだが、購買行動にかかる随伴性が明らかに違うのもまた確かだ。

通常、現金決済の買い物行動には、欲しい物が手に入るという好子出現による強化と、代金を支払うという好子消失による弱化の両方がかかっている。

Cashbuying

これが電子マネー決済になると、直後に財布からお金がでていくというtangibleな嫌子消失の随伴性がなくなる(弱化からの復帰)。支払うたびに電子マネーの残高は減るのだけれど、その提示時間は一瞬で、正直言って、自分はよく見ていない。

決済と同時に「シャリーン」と“気持ちいい”音がするという、幻惑的な好子出現によって遮蔽されているような気もする。ちなみに、このような電子音は携帯やPCの操作に随伴しているので、強化力がありながら、あまり気づかれてることのないステレス的な習得性好子になっているのではないかと疑っている。しかも、電子マネーの中にはポイントやマイレージ加算されるものもあり、新たに付加的随伴性が追加されているということも見逃せない。

Ecashbuying

というわけで、電子マネー。使い過ぎにはご注意を。