自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

ロボットの心の作り方

先週末、心理三田会(慶応義塾大学心理学専攻の同窓会)に参加してきました。懐かしい顔ぶれに久しぶりに会うことができて感激でした。自分が修士のときに卒論研究をサポートしたT田くんが、「私も勤続19年になりまして」とスピーチしたときには、さすがに時の流れを感じました。彼は学食で学生たちが食後に自分でゴミや食器を片付けるようにするパフォーマンスマネジメントの実験をしたのですが、そのときに使った巨大なポリバケツを想い出しました。

講演では『脳はなぜ「心」を作ったのか』の著者、前野隆司先生(慶応義塾大学)のお話をうかがいました。「意識」は幻想であるという主張をお持ちの前野先生は、ロボットや人工知能で「心」を作ろうとしています。

受動的 vs 能動的という区別とか、あるいは「幻想」という言葉はとても恣意的な表現です。何をもって「受動」とし、何をもって「能動」とするかという議論になってしまうと(なりがちだし)、あまり面白くありません。

むしろ、ニューロネットの仕組み(原理原則は非常に単純であり、動物の生物学的な構造ともかなりマッチしている)でもって、『心』と称される、とても複雑な現象がシミュレーションできるかどうかに興味があります。

特に、もし、人間以外の動物(や昆虫)の行動と、人間の心のシミュレーションに必要な仕組みとの違いが、こうした探求によって判明していくなら、とても面白いと思います。我々、行動分析家の多くは、それが言語行動、あるいはrelational frame?にありそうな気がしているわけで、それがコンピュータによるシミュレーションによって支持されかもしれないと思うわけです。

かつて「無理!」とあきらめられたという、学習原理を応用した計算機モデルでもって「心をもったロボット」を作ろうとしている前野先生の今後の研究に期待します。

前野先生のHPには「ロボットの心の作り方」という論文も公開されていますので、興味がある方はダウンロードして読んでみて下さい。