「チョムスキー」は二人います、と始まるこの本。前半では言語学者としてのチョムスキーに焦点をあて彼の生成文法論を紹介し、後半ではベトナム反戦運動から9.11以降の米国テロ戦争への反対運動で有名になった社会批評家(あるいは運動家)としてのチョムスキーの考え方をまとめている。
ご本人が執筆しているわけではなく(著者はジョンCマーハという人)、ところどころインタビュー形式でチョムスキーが語る、マンガ本みたいな構成。以前、このブログで取り上げたようにスキナーへの批判も掲載されている。
「入門」ということで、生成文法論の概略だけでもつかみたかったのだが、正直、よくわからなかった。ただ、次の箇所を読んで、わからなくても仕方がないのかなという気もしました(p.19)。
著 者:「あなたの唱えるI-言語とE-言語という区別は、なかなか難しいですね」
チョム:「難しいのは当然だね。E-言語はそもそも一貫性のないものだから、理解のしようがないんだ」
なんとなくだけど、彼のいう「普遍文法」を、あらゆる言語に共通ないくつかの機能としておきかえれば、スキナーとチョムスキーで実はおんなじようなことを言っている可能性もあるんじゃないかとは感じた。
チョムスキーはそれが生得的で遺伝的に組み込まれたメカニズムととらえたのに対し、スキナーは環境と行動の相互作用にある共通性ととらえられないかと論じただけじゃないかと。
研究室にラッセルのことばを掲げていたというチョムスキー(p.177)。
単純だが圧倒的な三つの情熱ー愛へのあこがれ、知識の追求、人類の苦しみに対する耐えきれないほどの同情ーが私の生活を支配してきた(ラッセル)。
社会問題への関心とコミットメントはむしろスキナーと共通するところだし、もっと同感してもよかったじゃないかと思う。チョムスキーは言語学者としての自分と社会批評家としての自分を区別していたけど、スキナーは逆に行動分析学で教育問題の改善に取り組むなど、学問と社会問題をリンクさせるというスタンスの違いはあったにしても。
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