自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

こういう社会システムの改善にこそ事前テストを

駐車違反の取締に民間監視員が導入された。同時に駐車違反のルールも変わり、違反はその場で処分されることになった。30分以内に移動させればセーフというのは、もう過去の話だ。

ニュースでは主に配送業者からのクレームが報道されているが、大手配送会社は、近くの駐車場から台車で荷物を運んだり、同乗者のアルバイトを雇ったりと、いろいろ準備をしていたようだ。

そのぶんコストがかかってしまうというが、報道されているように路上駐車の数を圧倒的に減らすことができれば、渋滞が緩和され、駐車スペースを見つけるのもこれまでよりはるかに早く、楽になるはずだから、コストを回収できる可能性もある(ただし、個人的には、都市部の渋滞の緩和に関してはかなり疑問を感じる。渋滞が減れば、渋滞を理由に電車やバスを使っていた人たちが自動車を使うようになるからだ)。

いずれにしても、どうしてこういうことを事前テストなしに一斉にしてしまうんだろう?という疑問が今回も残る。

都市や地域を限定して、運送業者や小売店など、関連する人たちと協働で、新しいシステムがうまく機能するかどうか、どういう問題が生じ、どのように解決できるかを見いだす作業が欠けている。

そういう事前テストをしておけば、たとえば業者側は回収見込みのあるコストの範囲内での対処法を考えることができるし、行政側もシステム運用のパラメータ(たとえば、必要な民間監視員の数や取り締まりをトラブルなく執行するためのノウハウなど)を調整できる。

2〜3地域でのテスト結果を参考に改善したシステムを、もう少し広い範囲や都市で再テストし、さらに改善してようやく全国展開、くらいのステップは踏んで欲しいと思う。

官僚の研修というか再教育が必要です。