自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

自殺予防

日経新聞(2005.8.31)の記事「自殺予防へ総合対策」の記事を読んで驚いた。

日本が世界でも自殺者が多い国であることや、自殺者数が増加していることはマスコミの報道などで漠然と知っていたが、驚いたのは新聞に掲載されていたグラフである。

なんと1998年を境にいきなり2倍に増えているではないか。

suicide

よく見直したら縦軸が縮小されていたので、実際には25,000人位から35,000人位へと1.4倍くらいの増加だが、それにしてもあまりに非連続的な増加だ(より詳しいデータはこちら)。

あまりに非連続なので調査方法や統計の取り方などの変更を疑ったが、いろいろ調べてみてもそれらしい情報はない。ほとんどは、不景気による解雇(失業率の増加)、経営苦など、経済的な原因を自殺者急増の主因としてあげていた。

もしそうであれば、「いのちの電話」的な、自殺を考えている人の話を聞いてあげるようなケアではカバーしきれないことも多いのではないだろうか。

朝日新聞の高谷秀男氏は「急ぐべき自殺防止対策は何か」で次のように論じている。

「経済生活問題」の増加957人はほとんどが「負債」による自殺だ。「経済生活問題」というと抽象的だが、なんのことはない実態は多重債務をはじめとする借金苦である。「負債」は率にして21.7%増えて5043人に達し、自殺者全体の15%まで膨らんでいる。

そして過大な負債を不必要に追わせないように、サラ金の規制強化、テレビなどのCM規制、また負債の次に多い「過重労働」を減らすためのサービス残業の規制を提案している。

すでに自殺を考えている人たちのメンタルなケアも大切だが、そもそも自殺を考えなくてもいいようにするための対策をしなくては、いくらサポートセンターを作っても追いつかないのではないだろうか。