自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

からあげクン、いかがですか?

ローソンで買い物をすると、ときどき「からあげクン、いかがですか?」と聞かれる。

この手の販促手法は“suggestive selling”(お薦め販売?)と呼ばれ、組織行動マネジメント(Organizational Behavior Management)の研究でも効果が確認されている手法である(文献参照)。

とはいえ、それは、レストランで食事を注文した客にワインなどを薦めるなど、すでに注文のあった(食べたいという確立操作が判明している好子)と組み合わせて強化力を発揮するような好子を薦めるプロンプトの場合だ。

たとえば焼き肉屋で焼肉を頼んだ客にビールを薦めるのであれば、十分成功が見込めるはず。

A:先行条件 B:行 動 C:結 果
E:確立操作 P:プロンプト ビールを

注文する

(遅延後)
ビールを飲みながら焼肉を食べる(↑)

焼肉を注文したとき 「ビールはいかがですか?」

ところがローソンの場合、すでに焼肉弁当や即席スープ、おやつのエクレアまで買おうとしている客に(私に)、堂々と追加のからあげクンを薦めたりする。

菓子パンを5つに野菜サラダをレジに持っていったときでも、からあげクンを薦められる(もう喰えないちゅうの)。

ローソンでバイトをしている学生に聞くところによると、とりあえず「からあげクン」を薦めましょう!くらいの緩い販促指示しかないらしく、せっかくのPOSなども活用されていないようだ。

A:先行条件 B:行 動 C:結 果
E:確立操作 P:プロンプト からあげクンを注文する (遅延後)

焼肉弁当と即席スープとエクレアに加えてからあげクンを食べる (↓)

焼肉弁当と即席スープとエクレアをレジに持って行ったとき からあげクンはいかがですか?」

ローソンくらいになれば、会計を通した商品と顧客のプロフィールから、その客とその商品の組み合わせに、何を薦めれば購入行動がプロンプトされやすいか、くらいのデータは蓄積されているはずなのに....と思う。

ちなみに、“suggestive selling”に関しては以下のようなOBMの研究があります。

Johnson, C. M., & Masotti, R. M. (1990) Suggestive sellingnext term by waitstaff in family-style restaurants: An experiment and multisetting observations. Journal of Organizational Behavior Management, 11, 35-54.

Ralis, M. T., & O'Brien, R. M. (1986) Prompts, goal setting and feedback to increase suggestive selling. Journal of Organizational Behavior Management, 8, 5-18.