自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

J-ABA報告(6):行動変動性と学校文化

以下のシンポジウムから考えたこと。

「行動変動性の実験研究とその応用可能性」企画:石井 拓(慶應義塾大学) ・山岸直基(流通経済大学) ・小野浩一(駒澤大学) 、話題提供:八賀洋介(慶應義塾大学大学院) 、山岸直基(流通経済大学) 、武藤 崇(立命館大学) 、指定討論:長谷川芳典(岡山大学)

(すみません。敬称略です)

行動の「変動」とはバラツキのこと。新しい行動をシェイピングによって教えるときには、標的行動に近い行動を強化で増やしながら、実は、消去によって反応を拡散させるステップが重要だったりする。

行動変動性を強化によって増減できるのか?、刺激性制御下におくことができるのか?、つまり「変動性」そのものを一つのオペラントとして(あるいはオペラントの次元として)扱えるのか?という問いが実験的に検討されてきた経緯と、さらにこうした知見が教育や臨床などに応用できるのか?という問題設定がよく整理されていて、基礎と応用の連携という点で近年まれにみる(? ^^;;)上質のシンポジウムだった。

ハトが複数のキーをつつく順番の変動性と、ヒトが4桁の“ランダムな”番号をたくさん考えるという変動性と、子どもが粘土でこれまでつくったことがない形をつくるという変動性などを、同じように扱えるかどうかも含めて、今後、さまざまなデータが生まれそうな期待感を持った。

ちなみに、いわゆる旧来の「学校文化」では、どちらかという変動性を低める介入が多い。ただ一つの正解を教え、ルールを守り、みんなと同じという価値観が重視される。それが妥当かどうかの判断は文脈に依存すると思うが、少なくとも評価の視点としての変動性が組み込まれることで、より柔軟な思考や自由さ、そして発展性がうまれるような気もする。