自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

卒業要件としてのGPA2.0など:玉川大学の取組み

日曜日のFDフォーラムは予想以上に楽しめた。何よりも玉川大学の菊池繁雄先生のお話が情報満載で面白かった。

玉川大学では以下の改革を推進しているとのこと:

  • 卒業要件としてGPA2.0を採用する(よってCを取った科目は再履修を可能にする)。
  • 授業時間は100分とし、授業外学習時間を確保するために16単位キャップ制を設ける。
  • 時間割を調整して、連続コマでは受講できないようにして(例:1時限めの授業をとったら、次の授業は3限以降にしか採れない)、隙間時間に自習活動を促す。
  • 通常の春学期、秋学期の他に、夏冬に集中授業期間をもうける(この期間の授業は科目数に応じて追加料金をとる)。
  • 時間割がうまく組めないなら、早朝の授業や夜間の開講も検討する。
  • 教員の担当コマ数にもキャップをもうける(通年10科目)。

「秋入学制度」のような雲をつかむような話ではなく、学生の学修(能動的な学びを「学習」とは区別してこう呼ぶそうな)の機会を確保し、支援するために、かなりラディカルではあるが、理にかなった方向性の一つだと思った。

風邪気味で発熱していたこともあり、パネル討論では若干とちくるった回答をしたような気がする。「授業改善をする気のない大学教員をどのように動機づけられるか?」といった主旨の質問に「大学には色々な人がいることが大事だし、学生もそれを学ぶことが重要だから、そのままにしておけばいいと思う」と回答したのだが、真意は次のとおり。

授業改善をする気のない教員をその気にさせるのはとてつもなく大変なことだし、そういう人はそれほど多くない(10%? 20%)。しかもこれからはどんどん減っていくはず。だから、大学全体で改善努力をするときには、大学側が支援すれば自発的に改善していく中間層を大事にしていった方が楽だし、おそらくお互い苦しむことなく成果もでるだろう。

当日の私の話題提供のスライド資料はここからダウンロードできます(←個別的な事例の話で、どちらかというと技術的な話です)。

追記:私は大学教育の質を改善する早道は授業料の従量課金と年限制の廃止だと考えてるのだが、玉川大学の夏冬集中授業(従量課金)はその意味でも興味深いものだ。菊池先生も同様の考えで、どうやら法律上は従量制は可能だそうだ。ただし、いくつかの理由で実現には大きな壁があるという(大きな壁についても菊池先生からお話をうかがったが、私信なのでここでは公開しない。興味のある人は機会のあるときにでも菊池先生に直接お尋ね下さい)。