自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

消費電力のパフォーマンスフィードバック: Yahoo! Japan の「電気予報」

Meter_setsuden

地球温暖化防止(CO2削減)というスローガンではなかなか進まなかった個人や家庭での節電だが、今回の福島原発での事故による大規模停電の怖れから、待機電力を減らしたり、照明を暗くしたり、冷蔵庫や空調の設定温度を変えたり、電球をLEDに買い替えたりと、"日本人らしい賢さ"を発揮している(随伴性の違いによるこのあたりの行動の差異はとても興味深いものだがその分析はまたの機会に)。

省エネ行動を引き出し、継続させるためには、測定とフィードバックが有効であることがコミュニティ行動分析学の研究からわかっている。これは以前にもこのブログで紹介した

実は原発の事故後から東電、そしてYahoo! Japan が東電の電力使用量をwebで公開していた。これだけ大規模なパフォーマンスフィードバックの例は世界初ではないかと、ひそかに興奮していたのだが、今回、それがさらに進化した。

これまで公開されていたのは、おおよそ1時間〜1時間半くらい前の実測値。だから、これから夏にかけて消費電力が上がって行くと、webでの数値は95%で、まだいくばくかの余裕がありそうに見えても、がん!と広域大停電が発生してしまうという悲惨な事態になりかねない。

そこでYahoo!は独自に計算したロジックにより、むこう24時間の電力消費の予報を公開し始めた。誤差2%程度というから、かなり信頼できる。天気や湿度、不快指数などの気象条件と電力消費の間の相関を使っているらしい(日経新聞, 2011/4/28, 朝刊)。

Setsuden

詳しくはこのページで。

ただ、こういうリアルタイム性が必要になるパフォーマンスフィードバックにはほんとうはwebは適さない。

放送各局には消費電力が許容範囲のたとえば85%を超えた時点でテレビ放送の右上とかに常に消費電力を表示したり、97%を超えたら「緊急地震速報」のように携帯に通知をして身の回りの電気機器をOFFにするように促すなどの手続きをぜひとも検討して欲しい。