自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

立ちション vs 座りション?

立ちション vs 座りション?

TOTOの調査によれば、洋式便器を使っておしっこするとき、今や男性の4人に1人が座って用を足しているという(日経新聞、2004.11.21)。

「掃除が楽になるから立ってするのはやめてよ」という奥さんからのプレッシャーで座らされる旦那さんが多いそうだが、少し可哀想な気もする。

もちろん、そこらじゅうに飛沫を飛び散らかしたままにする旦那さんの味方をするつもりはないのだが、「立ってするなら自分で掃除してよ」という奥さんには、小言によるマネジメントはほとんど成功の見込みがないことをお伝えしたい。夫婦関係がギスギスするだけですよ。

むしろ、旦那さんの掃除行動の随伴性を分析して、賢いマネジメントを試していただきたい。(ちなみに、そんなときに参考になるのがでご紹介した『うまくやるための強化の原理』です。)

ここでは便器製造会社か洗剤会社にむしろ逆説的な提案をしてみたい。

最近ではトイレのタンクなどに入れておく洗浄液が普及しているが、どうやらこうした洗剤にも限界があるらしい。それなら逆に、飛沫した小便が見えやすいように化学変化を起こさせるというのはどうだろうか?

飛沫した小便はそのときは目立たないが、長期間の蓄積をへて、洗剤でも落とせなくなるような汚れ(尿石)になるらしい。便器を掃除する行動とこの環境変化の関係を分析してみると、これが「チリも積もれば山となる型」であることが分かる。こうした随伴性では便器をふく行動は強化されない。

A:先行条件 B:行 動 C:結 果
汚れが目立たない 便器をふく 汚れをこびつかさなくてすむ(−)


だから、この問題の解決策は、便器をふく行動を強化する随伴性を新たに付加することである。たとえば小便が付着すると目立つ色(赤とか?)に変化するような素材あるいはコーディングを便器にほどこす。ただし、ペーパーなどでかんたんにぬぐい落とせるようにする。

そうすると随伴性はこう変わる。

A:先行条件 B:行 動 C:結 果
汚れが目立つ(赤い点々) 便器をふく 汚れがとれる(赤い点々なし)(↑)


奥さんから小言を言われるとカウンターコントロールによっていよいよ飛ばしまくる旦那さんも(そんな人はいないだろうけど)、随伴性がこのように整備されれば、自発的に掃除をしてくれるのではないだろうか?

旦那さん・奥さんへの日頃の勤労感謝にささやかな提案でした。