臨床心理関係の図書を数多く出版している金剛出版から隔月で刊行されている雑誌『臨床心理学』で行動分析学の特集が組まれた号を読みました。
一般臨床、発達臨床、学校臨床、リハビリの他に、薬物依存支援や矯正教育における臨床という、ふだんはあまりお目にかかる機会のない領域に関する記事もあり、勉強になりました。
上記リンク先のこれまで発刊された号の特集タイトルを眺めていると、この雑誌で行動分析学が特集されたこと自体が画期的であることがよくわかります。
神村先生と伊藤先生の「誌上討論」からは、昨年、法政で開催した公開講座「臨床場面における「ことば」をめぐる精神分析と行動分析との対話」を思い出しました。あのときは、東京国際大学の妙木浩之先生と、同志社大学の武藤崇先生の「公開討論」を私が司会させていただいたわけですが、結局は臨床の目的の違い(≒クライアントのニーズの違い)が分水嶺であると(再)認識しました。そして、研究ならともかく臨床サービスについての話であれば、選ぶのはクライアントであり、セラピスト側ではありません。だから、異なる臨床目的をもち、異なるクライアントのニーズにそれぞれ対応しているサービスプロバイダー同士の対話であれば、お互い、どこがうまくいっているかを共有し、役に立てる会話をするのが生産的で、お互いに批判し合うのはあまり意味がないと思います。これは私の意見ですが。
この雑誌をクライアントさんたちが読むことはないでしょうから、こういう特集を組むことで、現在心理臨床をやられている方、これからやろうとしている方が、これまで学んできたアプローチとはかなり異なるアプローチがあるのだと気づくきっかけとなることに意義があるのでしょうね。
さらに「広がる」ことを期待します。
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