定義:
「認知機能は、入力情報の感覚的、物理的な分析を行う「浅い」水準から、抽象的、意味的、連想的な分析処理を行う「深い」水準へと階層的に構造化されている」「深い処理を行う方が(その単語の)保持成績は優れたものになる」(『心理学辞典』(有斐閣), p. 430)。
行動分析学的解釈:
(ここでは文字刺激に対する反応のみを想定して解釈します)
文字に対する行動としては、機能的に独立したいくつかの言語行動クラスが形成されている。たとえば、文字の形態的特性と反応の関連をもとに般性強化されるタクト、文字と発話(読み)の要素毎の対応をもとに般性強化されるテクスチャル、文字と反応の内容的関連性をもとに般性強化されるイントラバーバルなどが形成されうる。
タクトの例:
「海」 → 「さんずい」、「10画(正しくは9画だが、正誤は無関係)」、「角張っている」、「大きい」、「赤」
テクスチャルの例:
「海」 → 「うみ」、「かい」
イントラバーバルの例:
「海」 → 「海水浴」、「夏」、「砂浜」、「オーシャン」、「去年は海に遊びに行けなかった」
他の刺激と同様、文字に対し、言語行動以外の反応も形成されていることもありえる。
その他の例:
「海」 → 寒気(レスポンデント)、海辺のイメージ(内潜的視覚反応)
文字刺激が提示されたときにどのような反応が自発されるかは、その刺激に対する過去の随伴性と、現在の状況(確立操作、その他の弁別刺激、強化随伴性)などによる。自発された行動が強化されるかどうかが、同じ文字刺激に対して同様の反応が繰り返されるかどうか(「保持テスト」における反応)に影響するが、多くの記憶研究では強化の変数は統制していないので、状況任せになっていると考えられる。そのような状況では、より多くの反応が自発可能で、かつ、実験において提示される他の刺激から引き出される反応とは異なる(弁別刺激の混乱が少ない)可能性の高い、イントラバーバルを自発させる手続きの方が「保持テスト」の成績が高くなるのは予想できる。これは「処理水準」の概念をさらに発展させた「精緻化」の概念にもあてはまる。
関連する文献
本シリーズの過去記事一覧: